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薄熙来裁判~ザ・ラブストーリー~セグウェイと生ハムと横恋慕―中国

2013年08月26日

■薄熙来裁判~ザ・ラブストーリー~セグウェイと生ハムと横恋慕■


■5日間の茶番劇

2013年8月26日、5日間にわたる薄熙来裁判がついに終わった。当初は2日間と伝えられていたが、その倍以上の長丁場という超面倒な事態に。個人的にも薄熙来裁判絡みでお仕事をいただいていたのだが、だらだらとお仕事が続くせつないことに。現地を取材されていたメディア関係者の皆様は現地で換えのパンツとか買う羽目になったのかなどと思いを馳せた。

というのも延々続いた裁判だが、基本的には茶番劇と総括できよう。 というのも基本的には起訴事実がちゃちいからだ。贈収賄、汚職絡みで立件されたのは収賄2168万元、横領500万元のみ。桁が一つ、二つ違っていても不思議ではないのだが、最終的にはたったこれだけの容疑となってしまった。

加えて妻・谷開来による殺人事件と王立軍の亡命未遂疑惑に関する職権乱用が問われたのだが、これも捜査攪乱のために診断書を偽造したとか、王立軍の「休暇式治療」を勝手に発表したとか、枝葉ばかりが問われている。


■バスケ選手と生ハムとセグウェイ

本筋は茶番劇だったが、その一方で笑いどころは豊富であった。3つ事例をあげよう。第一に「薄熙来を小さく見せましょうパフォーマンス」。

裁判所のマイクロブログが法廷での薄熙来の写真を公開したが、両脇に立つ警官と比べて背が低く、やたらとみすぼらしく見える。しかし薄熙来は身長186センチの大男。両脇の警官はいったいどんだけ大男やねん、と話題になった。ネットユーザーの調べによると、実は両脇の警官は元バスケットボール選手だという。そのため直立不動姿もあまり様になっていないではないかと指摘している(大紀元)。被告がみすぼらしく見えるよう、両脇に大男をそろえるのは汚職官僚裁判の常だという。

20130825_写真_中国_薄熙来_

続いてのお笑いネタは生ハム事件。大連実徳集団の徐明総裁が薄熙来の息子、瓜瓜くんのアフリカ旅行の金を負担していた問題についての証人質問で、谷開来が話したもの。瓜瓜くんは「木の台にすえられた、謎の動物の生肉」をお土産に持ち帰ってきたが、生肉なんか食えない!と薄熙来は蒸すように命じたという。「蒸したら意味ないべ!」と瓜瓜くんは抗弁するもパパの命令には逆らえず。蒸した謎の動物の肉は薄熙来一家が約1カ月がかりでおいしくいただいたという。

「木の台にすえられた、謎の生肉」で、しかも削ぎ切って食べたと証言されているので、十中八九、生ハムに違いないと予想されている。中国のネットでは「やばい、薄熙来裁判の実況を見ていたら腹が減ってきた」「イベリコ豚喰いたい」とか謎の盛り上がりを見せていたのだが、個人的に注目しているのは一点。「薄熙来も谷開来も生ハム知らなかったのか?」という点。

薄熙来はかつて商務部部長であり、海外企業とのお付き合いも豊富な人物。妻・谷開来は弁護士として、米国で訴訟して中国企業を勝利に導いた伝説の人物であり、しかも瓜瓜くんに付き添って英国に住んでいた経歴もある。生ハムなんぞ知っていてあたりまえだと思うのだが……。「ビジネス感覚に富み、外国人との付き合いにも長けた薄熙来」という評価が、生ハムを蒸すという事件でがらがらと崩れ落ちていく印象だ。

他にも徐明は瓜瓜くんにセグウェイをプレゼントしていたという。なんと薄熙来も試乗してみたとのことで、セグウェイをもらった事実を知らなかったはずがないというのが検察の主張。法廷ではセグウェイの写真まで公開されたという。正直どうでもいい話だが、薄熙来がセグウェイに乗っている図を想像するだけでちょっとおもしろいのは間違いない。


■亡命の理由は横恋慕

収賄についても、横領についても、結局は薄熙来が金を受け取ったという事例は例示されず、妻や息子経由だったと検察は結論づけている。横領にしても上級政府が秘密裏に必要としたオフィスについて、当初は科級政府の金で作り、後に金を渡されたのだがそれを谷開来がらみの弁護士事務所の口座に振り込んだという話になっている。ゆえに裁判で争われたのは、妻や息子が金を受け取った事実を薄熙来が知っていたかどうかが中心となっている。

それだけに谷開来が裁判の中心人物のようになっているのだが、ここで浮上するのが「恋多き女」というキャラ付けだ。殺害された英国人ビジネスマン、ニール・ヘイウッドとの慕情はもちろんのこと、薄熙来の右腕・王立軍は谷のことを愛していたという。告白した、ちょうどその時薄熙来が登場してしまったので、「告白がばれたから亡命するわ」というのが真相だと薄熙来は述べている。


(なぜ王立軍は亡命未遂したか、という話において)

薄熙来:王立軍はなぜ逃げようとしたのか。彼が自ら述べたいくつかの理由はすべて根本的に成立しえぬものだ。検察が提起した理由も、思うに牽強付会に過ぎない。本当の理由はすでに王立軍自ら述べている。彼は谷開来のことをひそかに愛していたのだ。その感情から王は抜け出せなくなり、谷に告白した。この点について谷への書簡にも王は書いている。

(告白の際)自分で自分に8発もびんたを浴びせたのだ。谷は「あなたは正常ではない」と言ったところ、王は「以前は正常ではなかった。今は正常です」と答えた。思いも寄らなかったのはまさにこの時、私がやってきたことだ。私は必要な物を取りに来ただけだったが、王は私の性格をよく知っている。私の家庭と私の感情を壊したこと、それこそが彼の亡命未遂の原因だ。実際のところ(彼の証言は)事態をかき乱そうとするものでしかない。

裁判長:被告人、本裁判所は事件の事実に沿って意見を述べるよう注意します。


谷:あなたは正常ではないわ。
王立軍:(恋心を押し殺していたこれまでの自分は)正常ではなかった。今は正常です。

という究極のメロドラマシーン。中国ネットでは「韓流ドラマ、キタコレ」などとも言われているが、仏頂面の薄熙来がおおまじめにこんな話を陳述しているかと思うと面白い。


■唯一の注目点:なぜ茶番劇裁判をやったのか?

「延々と薄熙来裁判の法廷記録を読んでいて馬鹿話しか収集していないのか!」と怒られると、何も言えなくなってしまうのだが、しかしこのばかばかしさを無視して薄熙来裁判を語ることができないのは事実である。

というのも薄熙来の政治生命は昨年9月に中国共産党のお沙汰が下った時点で決している。司法は後付けに過ぎず、薄熙来が法廷で何をしゃべろうとも量刑の多少にはかかわるとはいえ、有罪判決は決まっている。

なので注目ポイントは唯一、「なぜこんな茶番劇裁判を公開したのか?薄熙来が徹底抗戦した意味はなにか?」ということになろう。

「中国司法の透明性をアピールしたかった」などという分析もあるが、いい加減な起訴事実と茶番劇の審理でそんなアピールができたと考えるならば、相当の脳みそお花畑である。「法廷での大波乱は当局のシナリオ通り」と読む人もいるが、茶番劇裁判は薄熙来を英雄とあがめる極左の皆様を勇気づける内容であり、中国共産党が何より嫌う政権内部の亀裂を暗示する内容となっている。

裁判中、人民日報をはじめとする官製メディアが大々的な薄熙来バッシングを続けていたことを考えると、「薄熙来を支持する人も多いので法廷で弁明の機会を与えたら大変なことになったでござる」という素直な解釈が今のところ一番腑に落ちる気がしているのだが……。

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