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あの「時計アニキ」に判決が言い渡された。収賄罪及び巨額財産来源不明罪で懲役14年、罰金10万元に加え、500万元以上の財産が没収される。
■笑顔一発で人生を棒に振った時計アニキ
「時計アニキ」とは2012年8月から9月にかけて中国を騒がせた時事ネタ。記事「事故現場でへらへら笑っていた官僚、「人肉捜索」されネット炎上事件に―中国」に詳しい。
*官僚人生を終結させてしまった笑顔写真。
8月26日、陝西省延安市の高速道路で寝台バスがタンクローリーに追突、炎上し36人が死亡する惨事が起きた。その事故現場を視察したのが当時、陝西省安全生産監督管理局局長だった楊達才。不謹慎すぎると大バッシングを受けたばかりか、過去の写真まで掘り起こされ、ローレックスやオメガなどの超高級時計を所有していることが発覚。「息子が誰かからもらった」「講演したらお礼にもらった」などと弁明するも、ネットの怒りに迎合するように共産党紀律部局が動き出し、ついに有罪判決を受けてしまった。
*ネットユーザーが暴いた高級時計着用写真。
中国の官僚たるもの、多かれ少なかれなんらかの汚職をしているのは常識。マジメに調べられたらおしまいなわけだが、よもや“笑顔”一発で捜査のスイッチが押されるとは。誰もが羨む官僚ライフもどこに落とし穴があるかわからないものである。
■汚職官僚殺しの伝家の宝刀、巨額財産来源不明罪
「あの時計アニキに有罪判決が出た!」以上にネタがあるわけではないのだが、せっかくなので中国の汚職官僚殺しの伝家の宝刀、巨額財産来源不明罪についてご紹介したい。
これは「公務員が自分の稼ぎでためられるであろう額よりも多い財産を持っていて、その出所を説明できなかったらアウト」という恐ろしい罪。他の国なら検察がどのように不正蓄財したか立証しなければいけないわけだが、中国では容疑者がお金の出所を立証しなければならない。なお昨年には「麻雀で勝っただけ」という豪快な言い訳をした汚職官僚もいたが、裁判官は認めてくれなかったようだ(関連記事:汚職官僚の最強言い訳2012=ゴッドギャンブラー登場と中国ネット民騒然)。
楊達才の罪状は収賄が25万元(約400万円)。こちらの罪が懲役10年、罰金5万元(約80万円)、収賄額25万元の没収となっている。ただこの程度の収賄では高級時計をばんばん買うことなどできないという判断だろうか。巨額財産来源不明罪も合わせ技でつけられた。
楊達才とその家族が保有する財産1178万元(約1億8800万円)のうち505万元(約8080万円)の出所が説明できなかったことが罪となった。こちらは懲役6年(収賄との合わせ技で最終的な量刑は14年)、罰金5万元、出所不明の財産505万元の没収という刑が科されている。
検察が手抜きできるなんともステキな法律、巨額財産来源不明罪。ただしこの法律を使うかどうかは検察側の胸一つだ。先日、一審が終わったばかりの薄熙来裁判でもしこの罪を適用していたら、大変なことが起きていたはずだが……。
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