■日本人の民度は世界一、中国人はワースト2位?!デマ・コピペと中国人が民度を気にしすぎるワケ■
A5462 / SamCheong
「中国人の民度は世界ワースト2位」。数年前からネットに出回るデマ・コピペをいまさら中国メディアが槍玉にしている。この話を切り口として、中国人が気にしすぎる民度の話、特に民度ゲージと民主主義についてご紹介したい。
なお本記事で使う「民度」という言葉は中国語の「素質」を訳したもの。
■国連調査で日本人の民度が世界一と判明?!
「国連調査によると中国の民度は世界ワースト2位」というデマ・コピペについて中国メディアが否定記事を掲載している(レコードチャイナ)。2006年には出回っていたものだが、観光地での落書き事件など中国人の民度が話題になるたびに蒸し返されて話題となっていたという。今年もエジプトの遺跡に中国人が落書きしていた事件を期に再び話題になったという。
きれいさっぱり消されてしまったためか、元書き込みをみつけられなかったのだが、文学城の転載記事によると、ランキングは次のようになっているという。
1位:日本
2位:米国
3位:フランス
4位:オランダ
5位:スイス
6位:カナダ
7位:オーストラリア
162位:北朝鮮
163位:ウクライナ
164位:タイ
165位:コンゴ
166位:アフガニスタン
167位:中国
168位:インド
このコピペは2006年時点には出回っていたという。四川大地震での日本救援隊の礼儀正しい態度、東日本大震災での日本国民の秩序だった行動といった、「中国で注目された日本人の礼儀正しさニュース」以前から日本の評価が高かったことがうかがえる。
ワーストのほうの順位を見ると、なぜウクライナがランクインしているのか?インドにだけは勝っていることになっているがそんなにインドのことを馬鹿にしているの?とか、これまた想像するには楽しい材料がそろっている。
■中国人の対外国的世間体「中国の民度の低さ」は日本のネットニュースではアクセスを集める鉄板ネタだ。大声で話す、ゴミやタバコのポイ捨て、地下鉄の中で飲食、子どもにおしっこさせた……といったどうでもいいニュースが大量に日本語に翻訳されて流通している。
「ゴミのポイ捨てに心理的抵抗感がない」とか、「民主的な手続きに習熟していない」とか具体的な話ならまだしも、すべてをひっくるめて“民度”とまとめてもあまり意味がないと個人的には思っているのだが、関心を集める話題であることには違いない。
ただ見落とされがちなのが、日本人以上に中国人自身が中国人の民度について関心を持っているという点だ。そもそも中国人の民度について日本に伝えられるニュースのほとんどが中国メディア発のものだ。上述コピペが今年、再び話題となるきっかけとなった神殿落書きニュースもそこまで話題にするような話か、と不思議に思うほど中国では大々的に取り上げられた。
いわゆる日本人論の一つに世間論というものがある。日本人は世間からどのように見られているかについて異常に気を使う、一神教の国では宗教が他律的な行動基準となっているが日本人は世間こそが他律的な規範なのだ、という話だが、こと外国との関係においては中国も世間体に激しく気を使っている。落書き事件についても、文化財に落書きなど許しがたいという論調よりも、世界に中国人の恥をさらしたという論のほうが多かった。
国内ではあまり見ることがないのに、対外的にはしばしば見かける中国の世間論。なんだか奇妙で面白いのである。
■民度ゲージをあげなければ民主主義はできない?!もう一つ、民度が中国のネットで注目される大きな理由がある。それは民度が中国の政治体制改革をめぐる議論と大きくかかわっているからだ。
なぜ中国では西側のような民主主義が施行できないのか?その理由として官製メディアによく使われるのが「国情不一様」(国の状況が違う)という文言。その事情の一つとして民衆の政治的成熟度、すなわち民度が想定されている。
2011年末、中国の人気作家・韓寒が書いた民主と革命に関する3本のコラムが話題となったが、その1本目「
革命を語る」は今の中国の民度では革命なんかできっこないし、できたとしても新たな独裁者が登場するだけ、まずは車を運転する時、対向車をみたらハイビームをやめるような民度を身につけてから話しましょう、といった内容だ。
痛烈な政府批判コラムで名を馳せていた韓寒がまるで環球時報のようなことをいいだしたと話題になり、これまで持ち上げていた人まで一気にバッシングに転じる、ちょっとした騒ぎとなった。個人的には韓寒の論のポイントは
3本目のコラムで取り上げていた、現実味のない革命についてネットでおしゃべりしているのではなく、個々人がそれぞれ生活の中で変えられるところから変えようじゃないか、ネット弁慶の民主化シンパはもうやめようというところにあると思っているが、1本目のインパクトが強すぎたのか、「中国人は民主主義をやれるだけの民度はないというのか!」的な話に終始してしまった。
中国人の民度と民主についていうと、台湾がある種のロールモデルとなっている。「中華民族に民主主義をやる能力がないというが台湾の中国人は立派にやっているではないか」「台湾人の民度は民主主義を成立させるほど高い。台湾のように中国の伝統を保っていれば民度は高いのだ。大陸が今の惨状なのは共産党のせいだ」といった次第。
この台湾ロールモデル論についても、台湾の著名評論家である李敖の息子、李戡が「台湾人の民度が高いのは日本の植民地統治の影響」とばっさり切ったりと、あれこれ議論があって面白い(
レコードチャイナ)。
民主主義は民度ゲージが上がった結果として得られるなにやら崇高なもの、というよりもたんなる制度と手続きと考えたほうが正しいのではないかと個人的には思っている。ただ中国、とりわけネット論壇においてはエジプトの落書きと民主主義の実現はある種地続きの問題として考えられている。
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