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2013年09月10日
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■雲南省の片田舎で大胆すぎる経済統計の捏造、固定資産投資を10倍に
2013年9月、中国国家統計局は雲南省曲靖市陸良県の経済統計捏造を認めた。
通報を受けて検査したところ、工業生産総額のごまかしが発覚したという。28社に再検査を実施したところ、2012年の工業生産総額は63億4000万元(約1030億円)と報告されていたが、実際には28億2000万元(約457億円)。実際の2倍以上に膨らましていたことが明らかとなった。また今年上半期についても25社を再検査したところ、27億4000万元(約444億円)と報告されていたが、実際には10億6000万元(約172億円)しかなかった。
県当局は2012年に各企業あてに文書を通達。最初から工業生産額の目標値を決め、それを各企業に割り振っていたという。国家統計局は捏造対策として企業がネットで直接報告するシステムを構築しているが、県当局が事前に審査し、指定した数値で報告するよう強要していた。捏造に加担した場合は融資獲得や優遇政策で協力するという甘い誘いもあったという。「こいつんところの会社、悪いやつやないんやで。うちの県のためにいろいろ頑張ってくれとるんや。だから金を貸したってくれや」と県官僚とワンセットで金を借りにいけるというステキなサービスだ。
これ以外にも固定資産投資の捏造も発表されている。再検査の対象となった13の投資プロジェクトで、今年上半期の投資額(実行ベース)は2億1000万元(約32億5000万円)と報告されていたが、実際にはわずか2000万元(約3億2000万)しかなかった。
固定資産投資の統計については計画表や建設現場の写真などさまざまな資料を上級政府に納付しなければならないが、県住宅建設局、商務局、水務局、発展改革曲など複数の部局が一致団結、偽の施行契約書など偽造書類を取りそろえてごまかしていた。商務局が昨年末に完成していたプロジェクトを今年着工と変えていたほか、水務局は他の政府部局のプロジェクトを水務局のプロジェクトとして報告していたことが明らかになったという。実際の数字の10倍にふくれさせるのは容易ではない。県官僚の皆様の努力をおもんばかると目に熱いものがこみあげてくる。
■上振れバイアスと下振れバイアス
この手のアグレッシブな捏造が発覚したのは今年2件目。6月には広東省中山市横欄鎮が工業生産総額を85億1000万元(約1380億円)と報告していたが、実際には22億2000万元(約360億円)しかなかったことが明らかとなっている。また2012年2月に国家統計局が捏造撲滅キャンペーンを展開した際には複数の自治体でこうした統計捏造が発覚した(南方週末)。
「やっぱり中国の統計はウソばっかりや!中国の本当のGDPって半分ぐらいとちゃうん」と盛り上がりたい人には残念な話かもしれないが、中国統計のぶれは今回のような大きく見せるようなごまかしばかりではない。脱税というステキな誘惑がある分、実際よりも小さく見せかけたいバイアスのほうが強いという。
上振れバイアスと下振れバイアスの両方があるだけに、実際の経済状況をつかむのはなかなか大変で、中国の官僚さんの苦労がしのばれる。
ちょっと気になるのは今回の捏造が恒常的な問題だったのか、それともごく最近の減少だったのかという点だ。昨年からの足元の景気低迷をごまかすための工作だった可能性も高そうなのだが、国家統計局のざっくりとした説明では一番気になるポイントがわからない。
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