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2013年09月22日
sina weibo / jonrussell
■リツイート500回で実刑、最初の適用者は中学3年生
2013年9月17日、 甘粛省天水市張家川回族自治県の中学3年生が挑発騒動罪で逮捕された。事実ではないマイクロブログの書き込みが500回以上転載されると実刑の対象になるという、最高人民法院通達が適用された最初の例となった。
記事「事実ではないつぶやきを500回RTされると懲役3年、中国の新たなネット規制」でとりあげたが、最高人民法院及び最高人民検察院は9日、「最高人民法院、最高人民検察院による情報ネットワークを利用した誹謗などの刑事案件への法律的に関する若干の問題の解釈」という通達を発表した。ネットの誹謗中傷、事実ではない書き込みを罰する際の基準を明確化したもの。他者を誹謗する内容をマイクロブログに書き込み、500回以上転載されるか、5000回以上閲覧された場合には実刑を科すなどの条項が盛り込まれている。ネット言論を封殺しようとするものだとして大きな反発を呼んだ。
■不審死をめぐる書き込みを警察がデマ認定
その最初の適用例となったのが甘粛省の中学3年生だ。
発端は12日、カラオケの従業員が道路で死亡しているのが発見されたこと。警察側の主張によると、死因を調査するため警察側は司法解剖を申し入れたが、遺族側が拒否した。この時点で遺族と警察との間になんらかのトラブルがあったことは明らかだ。
14日、中学3年生の楊さんはブログやマイクロブログにこの件を書き込み、「警察は遺族を殴打した」「警察は犯人を知っている」「どうやらデモが必要なようだ」などと書き込んだ。
また同じく14日には死亡現場に数十人が集まり、スローガンを叫んだ。野次馬を巻き込み数百人が集まり、渋滞が起きるなど現場には混乱が起きたという。また遺族などが横断幕を持って県行政センターに行進する騒ぎもあった。
14日午後、警察は遺族の同意を得ずに司法解剖を強硬。死因は落下だったと結論づけた。遺族は反論しなかったというが、楊さんは15日にもネットにこの件に関する“事実ではない”書き込みを続けたと警察は指摘する。
かくして17日、楊さんが通う学校に警察が乗り込み、授業中の中学3年生を逮捕した。
■司法解釈の威力
22日付南都網によると、弁護を引き受けた王誓華弁護士が現地に到着したという。王弁護士はいわゆる人権派の弁護士で、このような問題で中学校3年生の少年を逮捕することが果たして妥当なのか、まだ若い少年に大きな傷を負わせるのではないかと疑義を呈している。
またネットには楊さんの14日の書き込みは夜のものであって、集会や行進などの昼間の騒ぎとの因果関係はないはずだと主張している。
事件の詳細は報じられていないとはいえ、経緯からいっても集会や行進の中心となったのは遺族であり、ネットの書き込みが要因になったかどうか立証するのは難しそうだ。もっとも検察側は因果関係を立証する必要はない。社会秩序を乱す、事実とは異なる書き込みがあり、それが500回以上転載されたという事実があれば、実刑に処すという司法解釈が出たばかりだからだ。
若人が社会正義の怒りからちょちょっとネットに書き込み、それが注目されてしまうと即有罪。ネットとはそのように恐ろしいものだと理解したまえという当局のメッセージからもしれないが、それにしてもなんともやるせない話ではないか。
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