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従業員への“福利厚生”を共産党紀律部局が摘発、月餅と灰色収入―中国

2013年09月29日

■従業員への“福利厚生”を共産党紀律部局が摘発、月餅と灰色収入―中国■

月餅カーニバル
月餅カーニバル / hoshner447


■習近平の公費での月餅贈答禁止令が、意図したところと別の場所に着弾


海南省衛生学校が職員、従業員に月餅券384枚を配ったとして、省共産党紀律委員会及び観察部局の調査対象となっている。

記事「節約ブームで月餅バブル崩壊か?キラキラ左派・薄熙来と地味左派・習近平―中国」で取り上げたが、節約王の道を邁進する習近平政権は公費での月餅購入を禁ずるお触れを出した。日本風にいうならば、お中元禁止令といったところか。もっとも月餅といっても金箔入り、燕の巣入りの超高級月餅もあれば、高級ワインとのセットなど贈答品市場を狙った超高級品も少なくない。また月餅と引き替えできる月餅券も普及しており、これを回収業者に渡すと現金化できるということで、実質的には現金の授受とあまり変わらないケースもある。
(中国のギフト券文化は記事「商売の天才・中国人が生み出したミラクルビジネス「蟹券」が面白い―中国」に詳しい)

というわけで偉い人の実質的な収賄禁止をターゲットに倹約令が発せられたのだが、なぜか「一般の教職員が職場からもらった案件」が初の摘発事例となりそうだ。


■日本とは違う、中国の福利

中国語の「福利」、すなわち福利厚生が意味するところは、日本語のそれと随分異なる。従業員に月餅を配るのも福利の一つ。本物の月餅を渡されることもあれば、換金しやすい月餅券を渡されるケース、プリペイドカードなど別のものも一緒にもらえるケースなどさまざまだ。

福利はさまざまな種類があり、私の友人は毎月トイレットペーパーやシャンプーをもらっていた。ホテルのフロントのお仕事だったのだが、身だしなみ費用の補助とかいう名目で始まったのだろうか。今となってはなんでシャンプーなのかは謎だと話していた。

社会通念として当然の権利と考えられている職員への月餅支給が槍玉に挙げられるとはかなり驚きである。もし支給しなかったら職員がストライキを起こしても不思議ではないのだが……。


■灰色収入としての月餅

さて、こうした一般的な給与には含まれない“収入”を、シンクタンク・経済体制改革研究会(CESR)の王小魯氏は「灰色収入」と呼んでいる。公式統計では把握できない収入のうち、(1)お中元や結婚式のお祝い金などわいろと断定できない慣習的な贈答金、(2)取得ルートがわからず違法なものと断定できないお金が該当する。

先日、最新の推定値が発表され、その総額は年6兆1200億元(約99兆1000億円)に達するという(CNN日本語版)。

灰色収入の多くは高所得層に集中しており、所得格差は公式統計よりも大きいというのがポイント。ただし忘れられがちなのは、低所得者、中産階層の灰色収入はゼロではないということ。月餅をいただくのも立派な灰色収入なのだ。

ちなみに2011年には月餅税というのが話題となった。所得税法の改定で今までは従業員にプレゼントされていた月餅が所得の一環とみなされて課税されるという騒ぎだ。ただこの騒ぎ、実はまったくの誤解で、現金以外の報酬にも課税するという規定は以前から存在し、無視されてきたもの。

つまり本来ならば物品を支給する福利も所得の一部として課税対象となるはずなのだが、なんとなく無視されてきたのが現状なのだ。2011年の騒ぎを経てどれほど変わったのか気になるところだが、「月餅に課税された!泣ける!」という話がでてこないあたり、あまり状況は変わっていないのかもしれない。

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