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2013年10月17日
■官僚腐敗分子打破!「在企業退役軍官」がデモ
2013年10月15日、河南省洛陽市で、「在企業退役軍官」によるデモが実施された。ブログ「中国茉莉花革命」が伝えた。
「冤」(不当な扱いを受けている)の一字が書かれた、そろいの黄色いジャケットを身にまとった1000人超の人々が市政府庁舎に行進。軍歌を唱った後、「退役軍官の合法的権益を保障せよ」「市トップに会わせろ」「官僚腐敗分子打破」などのシュプレヒコールを上げた。
またRFA中国語版によると、同じく15日、北京市第二中級法院に中国各地20省から集まった「在企業退役軍官」500人が黄色い「冤」ジャケットを身にまとって押しかけ、国家幹部として正しく処遇するよう訴えた。
■手厚い軍人への処遇からこぼれ落ちた人々
人民解放軍という巨大な軍を抱える中国だけに退役兵士の数も膨大だ。しかも近代化に伴い兵員数は大きく削減されたことが退役兵士の増加に拍車をかけている。戦闘訓練を受けた、膨大な数の退役兵士が不満を抱えれば、深刻な社会不安になりかねない……。
との分析もあるが、その点は中国共産党も重々承知。現役兵士の待遇改善はもちろん、退役軍人に対してもそれなりの処遇をしている。それでも待遇改善を求める老兵士のデモなどはちょくちょくあるのだが、全般的にみればうまくコントロールができているのではないか。
むしろ問題が突出しているのはなんらかの理由で、退役軍人の優遇措置にあずかれないでいる人の不満だ。その一つが「在企業退役軍官」である。「企業軍転幹部」とも呼ばれる彼らは、軍幹部から国有企業や政府機関に“出向”した人々。定年を迎えた後には退役軍人幹部と同等の処遇を受けると約束されていたはずなのに、その約束が反故にされたとして各地でデモや集団訴訟に訴える動きが続いている。
なにせお国のために尽くしてくれた軍人さんなので、その要求を簡単に無視することはできない。中央政府は地方政府に善処するようにと通達しているのだが、退役軍人幹部級の処遇をするとなればそのコストは相当なものとなるだけに地方政府も及び腰だ。
政府機関に“出向”した人ならばともかく、国有企業に飛ばされた人の中には改革に伴い職場が経営難に陥ったり潰れたりという人も相当数存在している。政府に改善を訴える気持ちもわかる半面、そもそも退役軍人幹部がおいしい待遇を受けすぎじゃないのと言いたい気持ちもある。「在企業退役軍官」によるデモは相当の頻度で起きているのだが、いまいち支持が広がらないのはそうした庶民のやっかみもあるように思う。
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