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2013年10月18日
お金を下ろすため、大八車で寝たきりの老人を銀行に運び込んだら死亡した。2013年9月27日、広東省茂名市高州市で悲惨な事件が起きてしまった。10月17日、農村都市報が伝えた。
69歳の鄧さんは脳卒中のため動くことも話すこともできない状況。自宅で点滴治療を受けて命をつないでいた。治療費が必要だと、息子が農村信用社から金を下ろそうとしたところから事件は始まる。
代理人の証明書として息子は鄧さんの戸籍簿、身分証を持っていったのだが、口座の名義と身分証の名前が一致しない。実は口座を開設した時に使った身分証は第一世代身分証と呼ばれる古いタイプのもの。現在は第二世代身分証に切り替えられているのだが、鄧さんは第一世代と第二世代で登録されている名前が違ったのだ。
農村らしいおおらかな間違いといえばそれまでだが、信用社はこれでは金は下ろせないと拒否。村役場で口座名義人と鄧さんが同一人物だとの証明書を持ってこいと命じた。息子は早速書類をそろえて信用社に行ったが、今度は「派出所のハンコがないではないか」と拒否。派出所のハンコを書類に押してもらって信用社に行くと、「いくらおろしたいんだ?3万元?じゃあ本人が来ないとダメだ」と非情な返答が帰ってきた。
点滴を受けていて動けないというと、職員は「点滴?針を抜いて連れてきたらいいじゃないか」とつれない答え。ここまでくると嫌がらせではないかと疑いたくなるが、鄧さんの親族は相談の末、職員の言葉通り寝たきりの老人を連れ出すことに決めた。
午前11時、大八車に乗った鄧さんは信用社に到着。無事に預金を下ろすことができた。しかし鄧さんの息子はそれではおさまらず、対応した職員が謝罪するように要求した。問題の職員は表にでてこず押し問答が続くなか、鄧さんの容態は悪化。救急車が呼ばれたが午後1時すぎに死亡した。
信用社の非情な対応が鄧さんを死に至らしめたと遺族は賠償金を要求。同日夜に信用社側は賠償金支払いに同意したという。
信用社と遺族の間では和解が成立したが、このとんでもない事件について通報を受けた南方農村報が報道。注目を集めた。報道を受け、信用社は関係した職員3人を停職処分とした。職員が鄧さんの自宅を訪ねて身元を確認するべきだったと責任者はコメントしている。
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