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ギャルゲーとgalgame、ガレキと手辦、海を渡ったオタク用語の意味が劇的変化=オタ中国人の憂鬱アップデート(百元)

2013年10月18日

■桂木桂馬はgalgameを遊ばない オタ中国人の憂鬱アップデート■

オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力

■オタ中国人の憂鬱アップデート

2年ほど前にブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」のまとめ本「オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力 オタ中国人の憂鬱」を出させていただきましたが、この2年で中国オタク事情も大きく変わり、書籍の内容も一昔前の話になってしまっています。また、いつもの中国オタクの反応という形では紹介するのが難しい話というのもたまってきていますので、「オタ中国人の憂鬱」のアップデートになるような話を書いていこうかと思います。

第10回となる今回は、前回記事でいただいた「中国オタク内の「ギャルゲー」に関する認識と、「galgame」という中国オタク用語に関するコメント」が非常に面白かったので、それを紹介させていただくと共に、関連する事情についてちょっと書いてみようかと思います。

<オタ中国人の憂鬱アップデート>
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■ギャルゲーとgalgameの間で

まず日本のオタク界隈における「ギャルゲー」という概念なのですが、これは中国オタクの間にはほとんど伝わっていない、或いは「galgame」という主に男性向け18禁PCゲーム、いわゆるエロゲーを指す中国オタク用語と誤解されている状態になっています。

「ギャルゲー」の定義については広義のものから狭義のものまでありますし、人それぞれな面もあって曖昧ですが、日本では少なくともいわゆる「エロゲー」との区別はあるかと思います。しかし、中国では「galgame」という言葉により「ギャルゲー」が「エロゲー」と混同されている模様です。

一応男性向けで女の子キャラが目立つ、活躍するゲームであれば「galgame」になるようで、日本の「ギャルゲー」も「galgame」の範疇ではあるようなのですが、中国オタク内で飛び交う「galgame」の話題はほぼエロゲーに関してですし、「galgame」は日本の「ギャルゲー」とは明らかに違う概念の言葉になっています。

そのため、日本の作品に出てくる「ギャルゲー好きなキャラ」「ギャルゲー趣味」ということについても誤解されがちです。言ってしまえば、日本での「ギャルゲー趣味」が中国オタク内に入ると自動的に「エロゲー趣味」と変換されてしまうわけです。

広い範囲で見れば似たようなものとされかねない所もあるジャンルですが、オタク的には結構大きな差ですし、主に家庭用ゲーム機での趣味が18禁PCゲームの趣味に変換されてしまうのはどうかと思うのですが、こういった部分の認識に関して中国オタク内ではどうもピンと来ないようです。


■北京オタクさんの疑問

これに関しては以前の記事「「俺妹」は中国オタク事情的にもスゴイ作品でした オタ中国人の憂鬱アップデート」でも「エロゲーという趣味の危うさ」に関して少々書いております。またその記事のコメントでのやり取りが面白く、私自身にとっても非常に参考になりました。以下、先日の記事のコメントからの引用です。

44. 北京オタク
管理人さんの言うとおり、私も一般PC作品、家庭用ギャルゲー、18禁エロゲーの区別よく分からない。中国広く認識とは、galgameは日本の恋爱アドベンチャーゲーム,普段HシーンあるのはPC作品、家庭用ギャルゲーは「和谐版」(Hシーンいない)と呼ばれる。エロゲーはただのセックス、恋爱プロットなんでなしのゲーム。本当の事実はどのようなものですか?ちなみに中国今でも海賊版が主流ですが、近年次世代ゲーム機発売した、中国本土正規版ゲーム購入するの人はより多くになります、私もこの3年間PS3/PSV/3DSのゲームは27体を買った。


47. 名無し
>>44 そこまで日本語が出来るのに何でわからないのかがわからない。というかわかってるじゃんwエロゲー…セックスシーンがある。ギャルゲー…恋愛を描いていても直接のセックスシーンはない。せいぜいキスまで。簡単に言えばこれだけ。まあ中にはきわどいのとか分類しづらいのとかもあるけど。


48. あ
>>44 オタク系で無い人の反応が違う。一般PC作品、家庭用ギャルゲーが好きと言うと、せいぜい引かれる程度だが、ギャルゲーが好きと言うと変態扱いされる。 


49. 北京オタク
>>47 ありがとう、なんかすっきりした。でも私実は日本語の文法全然知りません、敬語も分からん、全部アニメとゲームからの直感です。 


50. 北京オタク
>>48 家庭用ギャルゲーとギャルゲーの区別とは? 


51. 名無し
家庭用18禁ギャルゲーはないだろw 


53. 名無しの権兵衛
>>50 エロがなくてもシナリオが成立するのがギャルゲーエロがシナリオと深く絡んでるのがエロゲーってイメージだな、俺は実際のところ、最近の人気のエロゲーはギャルゲーに薄いエロくっつけましたってのが多いな濃いエロゲーはそもそも全年齢閲覧可能な場所じゃ話題にする人はいないから表に出てきにくい


56. 48
>>50 後者のギャルゲーと書いたのはエロゲーのことです。
家庭用ギャルゲー:Hシーン無し
エロゲー:Hシーンあり
家庭用は、古いものではときメモシリーズとか、最近のではフォトカノとか。エロゲーの例は、ここはそういうブログじゃなからタイトルは挙げないけど。一般人の反応は、俺妹の最初に父親にバレたシーンが若干参考になるかも。あれが家庭用ギャルゲだったらちょっと小言を言うか、もしくは何も言われないんじゃないかな。


62. ま
ギャルゲーは、サクラ大戦とかプリンセスメーカーとか、未成年の女の子がしてる姿を親に見られてもセーフ。親にねだって買って貰えるレベル。学校で先生に見つかっても生暖かい目で「そうか、こういうの好きか」と呟いて見逃される。エロゲは教師から親呼び出し、母親が泣き父親は目が泳ぐ、見られたらアウト、未成年の女の子がしてたら親は育児に間違いが無かったか自分を責めるレベル。エロに厳しい中国で混同されるのがちょっと信じられないな


63.
>>51 むかーし、セガサターンとかPCエンジンとかいうゲーム機があってのぉ…まぁずいぶん昔の話で、お若い方は知らんでも無理はないがのぉ… 


64. 北京オタク
>>53 >>56 >>62 なんかお前らの「ギャルゲー」時にはエロゲ、時にはエロ無し。つまり、ギャルゲーとは、エロゲと家庭用ギャルゲーの総称ですね。実際は多い誤解がありません、中国には、「家庭用ギャルゲー」っての名詞がいない、「纯爱版」「和谐版」「全年龄版」の「galgame」と呼ばれる。
ちなみに、私も黒猫が一番好き。
中国は封建社会離脱する百年未満、倫理観は强いのせいで、実の妹と恋愛がありえない、たとえ二次元でも、ちょっと纳得できない。でもこの結末一応主題を近いな。



65.
>>64 そういや「雷雨」とかでは最後自殺エンドだったよねwギャルゲーは狭義ではエロ無し家庭用ゲームで、こちらが一般的な使われ方だと思っておくといいよ。広義ではエロゲも含まれるけど、そっちの意味では一般的にはあまり使われない。
あとPCエロゲでも家庭用機に移植され非18禁になるとこの「ギャルゲー」になる。神のみの桂木桂馬とかも日本の意味での「ギャルゲーマー」だから基本的には家庭用ゲームを遊んでいる、エロゲには手を出していないというキャラで認識されている。中国オタの「galgame」は昔エロゲに対して使われていた「美少女ゲーム」の意味も混じっちゃっているみたいだね。 

69. 北京オタク
>>65 《紅楼夢》また最後自殺エンドね、兄と妹悲劇決定。じぁ中国オタク遊ぶのはほとんどエロゲですね(「民間漢化組」からの簡体字ver.少数の人正規版購入するコレクション)。まぁ、私の場合は、PCゲームしたくないので、詳しいわかりません。 


70. 65
※69なるほど!言われてみれば確かに兄妹はバッドエンドフラグだw
日本でも「実は兄妹」で悲劇な話はあるけど即バッドではないしオタ関係だとむしろご褒美になりかねん。
>>じぁ中国オタク遊ぶのはほとんどエロゲですねこれも言われてとても納得。中国オタ論壇で「galgame」について話しているのに出てくる作品がエロゲーの名前ばかりで不思議だった。見かけた中で数少ないギャルゲー範疇の作品はever17やメモオフ(秋之回億)、シュタインズゲートくらいしかなかったように思う。彼らが語ってたのはギャルゲーでは無く、galgameという中国オタク用語で呼ばれるエロゲだったということか。 


71. 北京オタク
>>70 このような勘違いは多いな、例えばフィギュア。中国本土のオタクは「手办」と呼ばれる、でも「手办」の意味はガレージキットです。理由がわからない、今「手办」は塗装済み完成品になりそうだ。
>>オタ関係だとむしろご褒美になりかねん。兄妹オタ関係で、むしろ最高じゃないか、三次元には、もっと良い関係を考えることはできません。 

以上です。


■ギャルゲー概念とエロゲー概念の混乱

コメントにもあるように中国でも「一般向けのgalgame」的な、日本のギャルゲーに対して使えなくもない言葉はあるようですが、日本のように「ギャルゲー」という独立した概念、ジャンルとして認識されているわけではありません。

この辺に関しては、現在の百度版wikiの百度百科の「神のみぞ知るセカイ」の桂木桂馬のキャラ紹介のページ(中国語)において、彼が「galgameの達人」とされてしまっていることからも見て取れます。

桂木桂馬に関してはギャルゲーをgalgameと誤解したことにより「彼はなぜ携帯ゲーム機で遊んでいるのか」「なぜgalgameを遊んでいるのにエロ方面への言及がないのか」といった矛盾のようなものが発生するかと思われますが、そういった部分に関しては、作劇上の理由、大人の事情といった風に認識されている節もあります。また「神のみぞ知るセカイ」の作中の世界は実際とは違う、ギャルゲー市場が活発になっているというifの世界だという点についても日本における認識とは異なる所があるようです。

このように中国オタク内ではギャルゲーという概念が広まらずに、「galgame」という言葉とそれに関する認識が広まっています。こういった状況になったのはギャルゲーが中国オタク内ではきちんと認識されないまま、エロゲーに押し流されてしまったというのが理由として大きいのではないかと思われます。

上のコメントにもあるように、中国オタク界隈における似たような事例としては「手办」(手作り)という言葉に関しての、ガレージキットとPVC製塗装済み完成品フィギュアの関係があります。元々「手办」と呼ばれていたガレキの存在が中国オタク界隈できちんと認知される前に、PVC製塗装済み完成品のフィギュアが大量に流通する時代が来てしまったので、いつの間にかPVC製を含むフィギュア全般、その流通量からPVC製塗装済み完成品を主なイメージとして「手办」という言葉が使われるようになっています。


■海を渡ったオタク用語の意味が劇的変化する背景

中国オタクのコミュニティがある程度きちんと構築され、交流や活動が活発になったのは00年代、それも中盤になってからで、その頃は既に日本のギャルゲー市場は下り坂でしたし、それと同時にエロゲー市場やエロゲー出身の作品が活発な時期でもありました。また上のコメントにもある通りエロゲーが「美少女ゲーム」と呼ばれることも誤解を加速させたようです。

それに加えて、中国ではゲームを入手するルートが主に海賊版やネットの違法ファイル経由という状態が続いており、そこでは日本における流通、販売の形式や18禁指定などのゾーニングが消えてしまいます。

その為、日本における家庭用ゲームとPCゲームの間にある壁、更にPC18禁ゲームとそれ以外のゲームの間にある大きな壁についての感覚はなかなか理解できないようですし、家庭用ゲームのギャルゲーであろうがPCのエロゲーであろうが海賊版或いはネット経由で入手するので、日本特有の家庭用ゲーム機市場におけるギャルゲーというジャンルの存在は意識され難かったようです。

この辺に関しては以前の記事でも書きましたが、日本でオタクをやっていれば普通に分かる「エロゲーという趣味の危うさについての感覚」まで消えてしまうので、イロイロと危なっかしいものも感じてしまいますね。
そしてこういった背景から、「galgame」は主に当時から盛んだったエロゲーを指す言葉として定着し、既に日本でも下り坂だった上に中国オタク内では意識されることがほとんど無かった「ギャルゲー」というジャンルもその中に飲み込んだのではないかと思われます。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年9月21日付記事を、許可を得て転載したものです。

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