中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年10月19日
広東省広州市で、モルヒネ成分を含むけしがら入り調味料が出回っていたことが発覚した。2013年10月9日、羊城晩報が伝えた。
■ごくごく当たり前のけしがら火鍋
中国ではドラッグ入り料理はそう珍しいものではない。記事「食べるだけでトリップしちゃう?!アヘン成分入りケシがら火鍋がブラックカレー並にスゴい―中国」で詳しく伝えたが、けしがら入り火鍋はかなり一般的な存在で、20年以上も昔、1991年に「食品中のケシがら(ケシの実)などを使用するなど違法行為取り調べに関する通知」が布達されている。お客様をトリップさせておいしく食べていただこうとけしがらを入れる火鍋レストランが続出していたという。そればかりか、頭痛薬を料理に入れる“薬膳”まで存在したのだとか。21世紀になった今もけしがら火鍋はあちらこちらに存在しているようだ。
というわけで、広州市のレストランでけしがらが使われていたとしても何も不思議ではない……と思っていたら、これがちょっと新鮮な事案だった。
■業務用だしにけしがら成分
2012年6月、広州市食品薬品監督管理局が市内のレストラン70店舗を検査したところ、うち2店舗でけしがらの使用が発覚した。
「てっきり火鍋に使われているのだと思ったら、潮仙鹵水汁から検出されたんですよ」というのが当局担当者の言葉。鹵水汁とは広東料理に使われる調味料。鹵肉、鹵魚(肉や魚の煮しめ)とさまざまな調味料を煮立てて作った液体調味料で、現在ではご家庭用に瓶詰めで販売されている。いわば広東料理用つゆの素といったところだが、それにけしがらの成分が入っていたのだという。これは広州市では初の事態だという。
各種スパイスの複雑な味わいが決め手の火鍋ならばけしがらを入れてもおいしそうな気がするのだが、よもや広東料理の調味料までけしがらが有効だとは。もはや魔法の隠し味というべきか。
■シェフの自白
当局がお店を問い詰めると、「知らない。コックに聞いてくれ」とのお答え。責任逃れにしか思えないが、中華レストランでオーナーが味にノータッチというのはよくあること。日本の中華レストランでもシェフが変わるとがらりと味が変わることもしばしばだ。個性があっていいといえばそれまでだが、上海料理のレストランに四川省出身のシェフがやってきたりすると、結構悲惨なことになったりも……。
閑話休題。そこでシェフを問い詰めると知らぬ存ぜぬという回答。重大事件なのだから観念せよと諭すと、ついにシェフは業者から仕入れた鹵水香料包にけしがらが入っていると白状した。鹵水香料包はだしパックとでも訳すべきか。本来ならば独自に材料を集め煮立てるべきだが、このパックを鍋に放り込んで煮るだけで鹵水汁が完成するという便利な一品である。この香料包に粉末となったけしがらが混入していた。
火鍋用のけしがらが相当広範囲に流通しているというのはよく知られた話なのだが、わざわざ粉末にしてだしパックの形態にしていることを考えると、その使用は火鍋料理以外にも広がっていそうだ。
結局、この取り調べでは香料包を販売していた業者にまで捜査の手が伸びることなく、パックを買っていたレストラン2店舗のみが処罰されることになった。「重大事件ですが、検出されたけしがら成分の量は少ないので……」という理由で、処分は罰金5万元(約80万円)のみにとどまっている。
ポイントとなるのはけしがら成分の少なさ、という点だろう。けしがら火鍋にしてもそうだが、基本的に中毒になるような量ではないという。それでも取り締まりのリスクを甘受してでもけしがらを料理に使いたいというお店が後を絶たないのは、隠し味としてのけしがらが相当イケてるからではないだろうか。健康被害がないのならば、いっそ解禁してくれれば……と、食いしん坊的には思ってしまう。
関連記事:
食べるだけでトリップしちゃう?!アヘン成分入りケシがら火鍋がブラックカレー並にスゴい―中国
南の楽園でタイ族と漢族マフィアが衝突、介入した警察が少数民族に発砲―中国
北京の空は汚れているか?中国政府対米大使館、3年間の戦い
何をするにもまず健康診断!不正書類が横行し効果は希薄に―ロシア駐在日記
中国ロック史史上最大のイベント開催!ついでに世界ロック史に残る珍事態も発生―北京市