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コメ輸出国世界一位の座から転落、巨額の財政負担が重石に、タイの画期的農民支援制度の“今”(ucci-h)

2013年10月23日

■10月新年度に入りタイのコメ政策は変わったのか?■

Rice fields
Rice fields / echiner1


10月はタイ政府の新年度、そしてコメ作年度のはじまりである。インラック政権の目玉政策である「コメ抵当スキーム」。コメを担保に農家が融資を受けられるという制度だが、担保を放棄すれば返済の義務はなくなる。融資額はコメの市場価格よりもはるかに高いため農民にとっては担保を放棄したほうが有利だ。かくして実質的には政府によるコメ買い上げ制度として機能している。

この制度が新年度も継続されることが決まった。

3年目を迎えた「コメ抵当スキーム」。当初は「世界一のコメ輸出国」という立場を生かし、国際的なコメ価格つり上げにつなげたいと意気込んでいたが、その狙いは実現していない。それどころか、世界の需給を反映して価格は下落。さらにタイはコメ輸出量世界一の座から転落している。政府が高値で買い取ったコメは政府の倉庫に山積みとなっている。その量は現在1800万トン、輸出2年分に相当する。その処分に頭を痛めることとなった。

さらに政策の失敗は国家の屋台骨にまで影響しようとしている。高値のコメ買い取りは実質的な補助金だが、その財政支出によりタイ国債の格付けにまで影響しようとしている。

政権は今年6月以降、コメ買取補助金政策の縮小を試みたが、票田の3分の1以上を占める農民層の不評を買うとして妥協を余儀なくされた。結局、縮小案は緩和された。

新年度も1期コメ(10~2月収穫)は従来どおり、籾量トン当たり15000バーツの価格で買い取りされることになった。ただし買い取り量は最大で1戸当たり50万バーツに限定される。3月以降の2期コメについては買取価格をトン13000バーツ、世帯当たり買い取り限度額を30万バーツにまで下げる方針だが、農民は反対している。

コメ抵当スキームはこれまで年2200万トンを買い上げている。その費用は年3300億バーツ。引き下げにより買い取り量を1800万トン、買い取り費用を2700億バーツに抑える試算だ。

かくしてコメ抵当スキームには副作用が目立つ。ただ一方で収穫量が少ない一部の農家を除いて、農民に収入増をもたらしているのは確かなようだ。しかし一時的な補助金政策では根本的な課題は解決しない。かつてはタイ経済の屋台骨だったコメは今、転機を迎えている。コスト削減、生産性向上、高品質品種の開発、そしてコメ作からの転換、借金経済からの脱却などの課題が山積みだ。

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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2013年10月16日付記事を、許可を得て転載したものです。

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