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中国で拡大続く日本アニメの公式ネット配信、各動画サイトのイメージと傾向について(百元)

2013年11月26日

■中国のアニメ公式配信中の各動画サイトのイメージと傾向 オタ中国人の憂鬱アップデート■

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ありがたいことに「中国におけるアニメの公式配信を行っている動画サイトの傾向やイメージを教えて欲しい」という質問をいただいております。中国のネットにおける日本のアニメの公式配信はここしばらくで随分と変化しましたし、ちょうどいい機会なので一旦まとめてみようかと思います。

7月、10月に公式配信となった作品に関しては、過去の記事「7月新作アニメの中国公式配信状況」「中国の10月新作アニメ公式配信状況」をご参照ください。とりあえず以下に私の偏見混じりではありますが、各動画サイトの傾向やイメージを紹介させていただきます。


楽視(letv)
現在公式配信を行っているサイトの中では最も「オタク向け」な所ではないかと思われます。毎期ごとに現地のオタク受けする作品をきっちり取って配信している印象です。

ここは昨年の反日暴動でゴタゴタしていたような時期に「ソードアート・オンライン」の権利獲得及び配信を行って現地で大人気を獲得するなどしていますし、中国のネットユーザー間におけるアニメ公式配信に関する認知を拡大させたサイトと言えそうです。

また通常のテレビアニメの配信以外にも、劇場版アニメ「言の葉の庭」の有料配信を試みたり、「俺妹」の世界同時配信の中国向けの配信を行ったりするなど、中国のオタク層向けに様々なアクションを行っています。現在予告されている情報によれば、「ソードアート・オンライン」の年末特番「Extra Edition」の年越し配信も行うようです。

ただ、他の動画サイトに勝手にアップされちゃっている動画に対して削除要請を活発に行ったり、外部サイトでの利用を遮断して自サイトでしか見れないようにするなどといったアクションに関しても初期から行っていたという面があるので「今までそういった圧力や規制についてあまり意識したことの無かった中国オタク層」の間で、圧力をかけてくるサイトだというネガティブなイメージも広まっているようです。

最近は楽視に限らずどこのサイトも自サイトで「独占配信」しているアニメ作品に関しては、他サイトにアップされている非正規な動画の削除要請を行ったりしているのですが、この先についたイメージもあってか楽視は中国オタク内では叩かれやすいようです。


愛奇芸(iqiyi)

中国の最大手検索エンジン百度の系列の動画サイトです。現在アニメの公式配信を行っている動画サイトの中では後発ですが、中国の動画サイト市場の中で現在最もパワーのあるサイトではないかと思われます。配信する作品はオタク向けではあるのですが、楽視よりも大作寄りな作品を取っている印象です。4月の新番組では「進撃の巨人」を獲得して社会現象レベルの大当たりを飛ばしたのも記憶に新しいですね。

またここの特徴としては、ユーザーのアップロードによる動画コンテンツというのが存在せず、全て購入した番組を配信する、hulu型のサイトだという点もあります。それと、ここは百度系列なのもあってか中国のネットの検索データをかなり持っているのが強いとも言われていますし、時たまそのデータに基づく、一般の感覚からすれば突飛にも思えるような番組オファーを行うという話も聞こえてきますね。

11/16追記:
ありがたいことに「iqiyiと百度関係で語るなら、百度系列の他のサービスのことも書くべき」というご指摘をいただきました。確かにiqiyiは違法作品、海賊版無しというのが強みの一つになっていますからそれ以外の事情についても書かないと片手落ちになってしまいますね。

iqiyi自体はhulu系の動画サイトなので基本的に版権購入コンテンツのみなのですが、百度系の他のサービス、百度視頻捜索、百度影音、百度視頻APP、百度影棒などは他所の動画サイト等のコンテンツにただ乗りする「盗鏈」行為が問題視されています。実際リンクやP2P系の転送、ブラウザのプラグインなどにより、他サイトが正規に購入しているコンテンツや、違法なコンテンツにただ乗りして活用できてしまうのも確かでして……。

また、この記事でも挙げた他動画サイトなどによる「中国網絡視頻反盗版聯盟」が百度系のサービスの「盗鏈」、「盗播」行為を非難し、3億元の損害賠償を求めるといった動きが出ています。その件に関しては中国語ですがこちらのニュースなどでも報道されています。この盗鏈によるコンテンツのただ乗り行為自体に関して中国ではまだ白黒ついてはいないのですが、とりあえずiqiyiだけで見るのと百度全体で見るのでは印象が違ってくるのは確かですね。


捜狐(sohu)

深夜枠、毎期ごとの新作の配信に関しては中堅所という印象ですが、ここは「ワンピース」や「トリコ」、「フェアリーテイル」といった非深夜枠アニメの配信も行っています。非深夜枠のアニメは、中国でもオタクに限らず一般層に幅広いファンを持っていますから他のサイトとは違った強さがあります。

もちろんここも毎期ごとの新作アニメの獲得には動いていますし日本における前評判の高い作品を獲得していたりはするのですが、現在中国オタク界隈で注目されている深夜枠を中心とした新番組獲得競争とはちょっと違った方向に向いているようにも見えますね。


騰訊(テンセント)

テンセントは電子書籍の配信などにおいては集英社系の漫画コンテンツを公式に配信するなどの動きがありますが、アニメの公式配信に関しての動きは今年7月になってからなので、アニメ配信に関してはまだどのようなカラーになるのか見えていません。番組の獲得状況に関しても7月はお試し、10月は様子見というような感じですね。

しかし最近はweiboなどの新しいメディアに押されつつあるものの、テンセントQQの圧倒的な普及率とそのルートを活用したコンテンツ展開力はいまだに健在ですし、中国のIT業界の巨人というイメージも変わりませんから、今後どういった動きがあるのかと言う点でも注目されているようです。


土豆(tudou)

中国における日本のアニメの公式配信で大きな動きがあったのは2011年末の土豆とテレ東の件からでして、土豆は中国におけるアニメ公式配信の先鞭をつけたサイトと言えます。しかしその後、土豆は優酷との電撃合併等のゴタゴタもありアニメの公式配信に関しての動きもいまいちパッとしない状態が続いているという印象です。

最近になり公式配信に関してまた動き出してはいるのですが、優酷と中国の動画サイト最大手を争っていた昔に比べて元気が無いように見えますね。土豆は動画サイトとしての歴史が比較的長いですし、企画力や運営のノウハウ、交渉力はあるようなのですが、肝心の資金力が不足しているらしいという話も聞きます。

また、土豆は中国における昔からあるフォーラム以外のオタク系のコミュニティや、オタク系ニュースサイト、weiboなどの新しいネットメディアの活用が上手くいっていないという印象も受けます。最近は現地のオタク系ニュースサイトで各動画サイトの番組獲得及び公式配信予定に関するニュースが出たりするのですが、10月の新作アニメの時などは土豆に関してだけなぜか載っていないという事態になっていました。節々で存在感を見せる動画サイトの古豪ではあるのですが、現在はイロイロと苦戦気味なのかもしれません。


快FUN

それともう一つ、最近始まったらしい快FUNという不思議なサイトがあります。

このサイトでは10月の新作アニメに関しては「ログ・ホライズン」、「蒼き鋼のアルペジオ」、「夜桜四重奏」、「ストライク・ザ・ブラッド」が配信されているようで、それから「攻殻機動隊ARISE」の配信も予定されているようです。また他に中国のアニメや、日本の過去のアニメも配信されている模様です。

このサイト上の「关于我们」(このサイトについて)を見ると「huadaiwang.com」とか書いてあるので、恐らく今年の3月頃に報道されていた日系資本が入るというアニメ配信サイト「華代網」関係のサイトではないかと思われますが、唐突に出現したので私の方でもよく分からないサイトなのですよね。

以前の「華代網」に関する報道については以下のサイト様の記事などをご参照ください。

D2C、中国市場向けに日本アニメなど正規動画コンテンツ提供目指す(知財情報局)
TBSテレビ、中国でネット配信事業にアニメ販売(TBS Program Catalog)

中国現地でのユーザー向けの広報活動もまだ行っていないらしく、現時点では中国オタク内でもこのサイトの存在は知られていないようですし、サイトの構造を見てもFAQが白紙だったりと作りかけに思われる個所が見受けられます。

また、現時点でサイト上に掲示されている許可関係のコードはICP登録と網絡文化経営許可証のみで、自前のサーバにデータをアップして動画を配信する動画サイトの運営に必須となるはずの「網絡視聴許可証」が掲示されていないのもなんだかよく分かりませんね。(例えばコメント弾幕系サイトのbilibiliはこの許可証を持っていないので、自前のサーバにデータをアップして動画を流すことはできません。可能なのは初期のニコニコ動画のようにコメントをかぶせるだけということになります)

この許可証に関しては非常に重要で、現在日本のアニメが正規の輸入ルートと手続きを経ないでタイムラグ無しに配信できているのも、この許可証を取得した動画サイトが一定の自主裁量のお墨付きをもらっているからなのですが……

それから配信しているコンテンツに関しても、日本海軍ネタが入る「蒼き鋼のアルペジオ」や、ドロドロバイオレンスの「School Days」など話題になり過ぎるとめんどくさいことになりそうな作品が見受けられます。

そんな訳で、ここに関しては私の方でもよく分からないとしか言いようが無いですし、少なくとも現時点では見ていてイロイロと疑問や不安の尽きないサイトですね。

ただ、ここで現在配信されている作品の中に「天空戦記シュラト」があるのはちょっと面白いですね。こういった過去に中国のテレビで放映されて人気になった作品は、中国語字幕版や中国語吹き替え版で、きちんとした画質のデータが存在しない或いは揃っていないということなので、シュラトのような過去の中国における人気作品を中国語環境で提供するというのはちょっとした強みになりそうな気もします。

以上、非常にイイカゲンなもので恐縮ですが、現在中国のアニメ公式配信に関してはこんな所でしょうか。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年11月14日付記事を、許可を得て転載したものです。

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