■オッサン「寂しくないか?一緒に寝てやろうか?」、日本人はビックリするバングラデシュ人の距離感(田中)■
2010 Media Tour to Bangladesh / US Mission to the United Nations Agencies in Rome
バングラデシュにやってきた日本人の間では、距離感の違いに戸惑うエピソードに事欠かない。
「あるベンガル人の同僚と一緒に車の後部座席に載っていたら相手がそーっと小指を絡めてきた。」
「一人旅中、仲良くなったバングラデシュ人が、「寂しくないか、オレが一緒に泊まってやろうか?」といってきた。」
「バングラデシュに来るたびに友人と男同士一緒のベットに寝なくてはいけないのが実は苦痛。でもいまさら拒絶すると相手が傷つくとおもっていまだに言い出せない。」
「とある援助機関の研修で日本にやってきたバングラデシュ人。ホテルで一人で寝るのが寂しいとガイドを真夜中に起こして泣きついた。」
別に性的関係を求めているわけではない。友達同士はそういうものだという感覚なのだ。常に誰かと一緒にいるのがあたりまえ、逆に「個人のプライバシー」という概念はない。
また、男女の仲でもとにかく連絡をまめにとらないとその関係を維持するのが難しいようだ。
「若い恋人同士、長電話すると通話料を払えなくなるので30分おきに携帯をワン切りして相手のことをいつも想っていることの合図とする。」
「たとえ仕事中であろうと1日に2回は家族に電話をかけなければ冷たい男あつかいされる」
この携帯ワン切りで相手に合図を送るというのは海外に出稼ぎに行っているバングラデシュ人と留守家族の間でもよくやっているらしい。
歓待の習慣も日本と違う。旅先でも仕事でも、ちょっと仲良くなったバングラデシュ人から、食事に誘われることは多い。
食事に誘われないまでも、訪れた先でチャ(バングラ式激甘ミルクティー)やビスケット、りんごなどのフルーツが運ばれてくる。ここで、出された食べ物を遠慮して食べないと、相手はすごくガッカリしてしまう。
ベンガル地方の食事は米飯にやや汁気の多いカレーを混ぜて食べる。歓待の席では招待した主人自ら客人に食事をよそうことになっている。とにかく招待側はどんどんよそってくる。この時に何度もいらない、もう食べられないと言わないと勘弁してくれない。皿に盛られた料理をすべて平らげようとすると、まだ足りなかったかと勘違いされさらに盛られてくるので、注意。ちょっとだけ残すと「もう終わり」のサインとなる。
食事は余るほどつくり、客人がもう食べられないところまで食べさせるという歓待の習慣は中国にも似ている。この食事の席でも下手に遠慮するより、あれが食べたいこれが食べたいと図々しくお願いしたほうが彼らは喜ぶ。それが距離感が近い事、友人同士の証明になるのだ。
常に大勢の人に囲まれ、その人々の距離感がすべて近い。人付き合いの距離感の近さ故にストレスを感じる外国人が多い一方で、この距離感が懐かしくてまた戻って来たくなる、そんな不思議な魅力がこの国にはある。
しばらくバングラデシュに滞在したことのある人であれば、たとえ10年ぶりにふらりと帰ってきた時も、あなたのことを覚えている人はかならずいる。そしてもどってきたときにはまたいつもとかわらぬ笑顔であなたを迎え入れてくれるだろう。
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■執筆者プロフィール:田中秀喜
1975年生まれ。メーカー勤務、青年海外協力隊、JICA専門家を経てバングラデシュでコンサル業を起業。チャイナプラスワンとして注目されながら情報の少なさから敬遠されがちなバングラデシュの情報源となるべく奮闘中。