中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年12月02日
P1010690 / 大杨
先日、ネットで「環球時報は戦争を煽りまくる三流タブロイド紙」的な言葉を目にしました。確かに愛国心を強調する保守系のポジションで固定読者をつかんでいるメディアですが、ただ想像されているほど単純なメディアじゃありません。特に社説の魔球的ロジックはすばらしい。評論文の試験に採用すると誤答が続出することは間違いなし、です。
■問題文
テキストとするのは2013年11月29日付の社説「中国が一流の強国となることを日米は邪魔できない」です。まずは冒頭4段落をお読みください。面倒な人は太字部分だけどうぞ。
中国台頭の戦略環境は深刻に悪化したのだろうか?日米が手を組み中国の更なる発展を抑制、中国のさらなる発展を窒息しささえるのだろうか?将来起こるであろう不測の事態に耐える力を中国は十分に持っているのだろうか?こうした問題が我々につきまとうが、本当の答えは時間の経過を待つしかないのかもしれない。
だが歴史的な経験と国際政治の基本的なルールは我々に先行きを教えてくれる。一つのきわめて重大な現実は中国はすでに工業文明時代に入ったということだ。中国の工業化の道のりはまだまだ長く、米国とはなお一定の距離がある。ゆえに我々は西側諸国の前で謙虚に振る舞うことを余儀なくされているのだが、しかし一方で言えるのは、人類史上、中国ほど巨大な工業化国家が外部の力に征服されたということはないという事実だ。外部の力で現在の中国を打ち倒す、これは西側にも想像すらできないことである。
もっと重要なことは中国台頭の原動力は一般市民がよりよい生活を送るようになったという点にある。国家による政治設計がもたらしたわけではない。中国の一般市民がよりよい日常生活を送ることが、この国を米国と肩を並べるポジションへと押し上げることになるのだ。その意味で中国台頭とは本当の意味での“人民戦争”である。
中国自身が根本的な問題で過ちを犯さないかぎり、日米は中国抑止に総動員をかける可能性はきわめて小さい。彼らの策略は中国に圧力をかけ影響を及ぼし、中国社会自身が内部から変形するようにしむけ、崩壊に至らせることだけだ。
中国で意見が多元化するのはきわめて正常だ。多くの口論は科学的決定、社会的共通認識の促進に有利だろう。しかし今、一部の人々はイデオロギーの標榜に熱中している。すべてを欧米化することで中国の主流的価値観と対抗しようとしているのだ。こうしたイデオロギーに基づく対立はさまざまな亀裂をもたらす。議論があればあるほど分岐は多くなる。こうした分裂は日米は望んでいるところであり、彼らが促進しようとしているものでもある。中国の足並みを乱すための近道なのだから。
「中国はインターネット時代の言論の自由を本気で考えなければならない」。この課題に共通認識が生まれることはなく、永遠に問題のままだろう。しかしどのような形で言論の自由を構築したとは言え、社会の分裂と対立を扇動するような言論は好き勝手にネットに流してはならない。これは公の誹謗中傷を禁じる法精神にも背くもので、法によって制裁を加えなければならい。社会道徳規範と人文価値観に背くものは世論と学問の批判を受けなければならない。
愛国主義は中国の更なる台頭にも欠くことのできないものだ。国家の士気にとって重要な源泉だからというだけではない。重大な時期に社会の亀裂を応急措置するリソースでもあるからだ。愛国主義発揚の社会環境はすでに大きく変化している。これは新たな試練だ。現在、中国国内のインターネットには愛国主義をあしざまにいう異端邪説が流通している。その有害性はきわめて強く重視されなければならない。
無慈悲な対日強硬論。