• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

大政治家になった薄幸の美女、3度目の首相就任が有力となったカレダ・ジアの人生(田中)

2013年12月07日

■大政治家になった薄幸の美女、3度目の首相就任が有力となったカレダ・ジアの人生■

Khaleda Zia former Prime Minister of Bangladesh
Khaleda Zia former Prime Minister of Bangladesh / Foreign and Commonwealth Office


もうすぐ総選挙のバングラデシュ。2013年12月初旬現在、相変わらず混乱の日々が続いている。ただ、これまで選挙の度に政権が交代してきた過去があるだけに野党側が有利と見るべきだろう。そこで次期首相になるであろう野党のBNP(バングラデシュ民族主義党)党首ベグム・カレダ・ジア(Begum Khaleda Zia)について、焦点を当ててみたい。

バングラデシュはイスラム教徒が多く住む国である。イスラム教では女性よりも男性が上に立つことが一般的に多い中で、現首相、シェイク・ハシナもカレダ・ジアも女性である。なぜ彼女は国政のトップの座を務めるにいたったのかだろうか。


■暗殺された夫の遺志継ぐ、薄幸の美女が大政治家に

カレダ・ジアは1945年バングラデシュの北西部、デイナジプールで生まれた。中学まで勉強した後、15歳で見合い結婚。20歳で出産。ここまではその当時のバングラデシュ人女性が歩むごくありふれた人生だった。この庶民として生まれた肌感覚は彼女にとって国政に向かうとき大衆の支持を得る武器となる一方で、都市部のインテリ層には敬遠されがちな一因となっている。

ありふれた人生を歩んでいたカレダ・ジアが歴史の表舞台に出ることになったのは1982年だった。この年、クーデターで夫であるジアウル・ラーマン(Ziaur Rahman)大統領が暗殺された。大統領が率いていた政党BNP(Bangladesh Nationalist Party:バングラデシュナショナリストパーティ)は突然リーダーを失ってしまい、その跡目として選ばれたのが大統領夫人のカレダ・ジアだったのだ。

幸か不幸か、彼女にはバングラデシュ人の一般庶民に崇拝されるような美貌があった。バングラデシュ人が美人と感じる特徴である、色白、豊かな黒髪、そして長身という条件を備えていたのである。(ここで写真を見て異議を唱えてはいけない……)

公的資料に彼女の身長についての記述はないが、ヒラリー・クリントンと並んだ写真がある。169センチのヒラリーと変わらぬ背丈だ。バングラデシュの一般庶民は全体的に身長が低く、男性でも160センチない人たちが多い中彼女は見上げるほどの存在。畏怖を抱かせるのに役立った。

大統領暗殺事件当時で36歳。若くして夫を亡くし、志半ばに倒れた夫の遺志を継ぎ、国政を志す薄幸の美女というストーリーは一般大衆の支持を得るのに奏功する。

早い話が映画「極道の妻たち」をイメージしてもらえるとありがたい。突然の死を迎えた親分の跡目を下手に子分に継がせると内部分裂、抗争の原因となる。それよりは政治的に色が付いていない血縁者をトップに据えてしまったほうが争いを避けることができる。(ホルタルの回でも述べたが、バングラデシュはヤクザの世界をイメージしたほうが理解が早い……)


■BNP次期党首の行方:夫を亡くした妻からその息子へ

この庶民生まれの中卒女性が首相の座に上り詰めるのは1991年の事だった。夫、ジアウルラーマンの死後、軍事政権を握っていたエルシャド大統領を国政の座から引きずり下ろし、総選挙で勝利したのである。この時だけは以後血みどろの抗争を繰り広げることになるライバル、現首相のシェイク・ハシナと共闘でエルシャド政権に立ち向かっている。これ以後、国政のトップが大統領から首相に変わることになった。

現在カレダ・ジアは68歳。今回の選挙で勝てば3度目の首相就任となるが、これが年齢的にも最後の仕事になるのではないだろうか。

次のBNPのリーダーになるのは、長男のタレク・ジア・ラフマン(Tarek Zia Rahman) だろうと大衆の間では噂されている。このタレク氏、超学歴社会になったバングラデシュでどういうわけか大学をでていない。他に人物が党内にいないわけではないのだが、やはり、血縁者にリーダーを引き継がせないと跡目争いで内紛が起こることになるようだ。

関連記事:
ガンジーの非暴力運動が超暴力的政治活動に発展、バングラデシュ名物「ホルタル」(田中)
日本企業の凋落、インド企業の台頭、そして国産企業の胎動=バングラデシュ二輪車市場(田中)
(田中)
オッサン「寂しくないか?一緒に寝てやろうか?」、日本人がビックリするバングラデシュ人の距離感(田中)
恐怖の選挙日、投票に行かないとやってくる「背広のおじさん」―ロシア(タチアナ)
前田敦子に2億円?!AKB総選挙に関する中国ネット民の反応―金ブリ浪人のススメ

■執筆者プロフィール:田中秀喜
1975年生まれ。メーカー勤務、青年海外協力隊、JICA専門家を経てバングラデシュでコンサル業を起業。チャイナプラスワンとして注目されながら情報の少なさから敬遠されがちなバングラデシュの情報源となるべく奮闘中。

forrow me on twitter

トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ