■【小ネタ】「週刊誌が中韓叩きをやめられない理由」に関する金鰤の若干の意見■
■ネットで話題の「週刊誌の中韓叩き記事」問題と百家争鳴作家の安田峰俊さんのつぶやきがネットでちょっとした注目を集めている。
関連するツイートについては
トゥギャッターにまとめられている。また軍事ブロガーのdragonerさんがエントリー「
中韓を嘲笑う前に、我が身を振り返ろう」を発表。根拠レスに隣国をこき下ろすのは“心地よい”かもしれないが現実を見よう。例えば軍事技術の研究開発費ではすでに中韓に抜かれているという現実を把握しようとの内容だ。
で、ネットの反応が面白い。
・まさに愛国ポルノだね派
・今までの揺り戻しだから当然だよ派
・週刊誌が本当は書きたいことってなんだよ派
・週刊誌なんだからなんでもいいんじゃね派
・週刊誌を読むような老人こそネトウヨだね派
・昔から変わってなくない派
・右でも左でもいいけど現実見ようぜ派
・そんなことより野球しようぜ派
などなど百家争鳴の相を示している。
というわけで、私も便乗して新たな派閥を立ち上げたいと思う。その名も「もっと多様な芸があってもいいんじゃね派」だ。
ウソやヘイトスピーチには断固反対するが、メディアが市場のニーズに合わせるのはそんなに不思議な話ではない。問題はどこの週刊誌も中韓叩きに関しては似たような方向性で、アグレッシブかややアグレッシブかぐらいの違いしかないのが問題だ。同じ中韓叩きでももっと多様な芸があってしかるべきではないか。
■光る「芸」:日本代表というわけで、昨秋の尖閣諸島問題が起きてから多くの書籍、記事が出たが、その中で「芸」として光っていたものを紹介したい。
日本代表は津上俊哉『
中国台頭の終焉』だ。短期、中期、長期の中国経済の問題を論じた本だが、人口動態から考えて中国の成長率鈍化は避けられず、米中経済逆転はないと予測している。この本を出版した動機が日中対立だというから面白い。
リーマンショック後に中国では、欧米の時代は終わり、これからは中国の時代との認識が広がり、それが大国意識に結びつき強権的な外交に結びついた。一方、中国が米国をも追い抜くという危機感が石原慎太郎都知事(当時)による尖閣買収に踏み込ませたのではないかと指摘。現実には米中逆転はなく、それどころか中国は15年遅れで日本を追いかけているので島で騒いでいるどころではないし、中国に先行して経済低迷で苦しんでいる日本はなおさら喫緊の課題に向き合えと説いている。
■光る「芸」:中国代表一方の中国代表は中国の経済誌・財新の胡舒立編集長のブログ「
日本相手に“経済カード”を切るのは慎むべきだ」。2012年9月21日という対日強硬論がもっとも盛り上がっていた時期の記事だ。基本的には日中の経済関係は守るべきというごくごく当たり前の主張をしているのだが、怒り狂う人々を説得するロジックが面白い。
領土紛争の処理にあたっては交渉など外交的手段で平和的に解決するのが基本。軍事的威嚇も一定の役割を果たすかもしれないが、経済戦だけは必須でもなければ必然でもない。
日中間の「政冷経熱」の局面はおそらく続くだろう。両国経済の互恵は必ずしも戦略的互恵関係の発展を推進するものではないかもしれない。しかし経済線は間違いなく双方の政治的関係、戦略的関係に大きな打撃を与える。中国は経済を賭け金にしなくとも領土問題を解決できると自信を持つべきだ。我々が繰り返し指摘したように、時間は中国の味方なのだから。
「軍事的威嚇もありかも」「時間は中国の味方(日中の国力差は中国有利に傾く)」という強硬派の人にもしっくりくるロジックで、ともかく商売のタネは守ろうと説得する内容だ。
■新たなマーケットを切り開く新鮮な「芸」を津上さんも胡さんも尖閣でバトってる場合じゃないという点では一致、ある種の棚上げ論を展開しているわけだが、その将来予想が真反対なところが面白い。
たとえニーズがあったとしても、すべての週刊誌が同じことをやっていればあっという間に消費されてしまう。中韓叩きネタだろうがそうじゃないネタだろうが、新鮮なロジックや切り口、語り口という「芸」で新たな市場を切り開いていくことに期待したい。
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