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「面倒くさいんで辞めたいんですけど……」ベトナム共産党員の正しい辞め方(いまじゅん)

2013年12月27日

■「面倒くさいんで辞めたいんですけど……」ベトナム共産党員の正しい辞め方■

Hanoi: Streetside Bakery
Hanoi: Streetside Bakery / Stephen_AU


■活動が面倒臭いので党員やめたいですinベトナム


共産党一党独裁のベトナムにおいて、「共産党員である」というのは基本的にエリートであることを意味します。党員になるのも大変です。現党員の推薦はもちろん、本人や家族を何世代かさかのぼっての「身分チェック」が行われます。反体制勢力と関係がないか、親やその上の世代まで確認されるわけです。それら諸々の審査を経てやっと党員資格を得られます。

政府機関や国営企業などの公的組織が特にそうですが、共産党員であることはキャリアップに有利に働きます。ですが、その一方で面倒な各種のお仕事があるのも事実。というわけで、「やっぱもう辞めたい、面倒くさいし」という人が結構いるのだそうです。BBC Vietnameseが伝えています。

「党員活動やめたい熱」が目立つのは、定年した政府機関職員や政府系から民間、特に外資系に転職した人とのこと。「Sinh Hoat」(漢字で書くと「生活」)とベトナム語で表現されていますが、共産党員としての各種の活動、特に組織や地域支部での会合、会議に呼び出されるのが「面倒くさい」というのが理由だとか。


■共産党の正しい「やめ方」

とはいえ、共産党一党独裁のベトナムです。どうやったらひんしゅくをかわずに、あるいは自分にマイナスにならないよう共産党員をやめられるのでしょうか?その答えは「引っ越し」です。

抜け道的な「やめ方」ではありますが、引っ越しをして住所を変えた後、新しい住所の「届け出をしない」だけでOK。共産党員資格は残るのですが、共産党員としての活動をしなくても済むようになるのだそうです。

国内の引っ越しだけではなく、海外への引っ越しもあります。出稼ぎのために一度海外にでたら行方知れずに、というケースも多々あるのだとか。ゲアン省の党員1万7000人のうち約1000人が海外にいますが、うち540人はなんの手続きをすることもなくふらっと海外に消えたそうです。405人が党員資格を剥奪されています。海外にも党組織はあるのですが、把握できる数はごくわずか。

共産党の理論系ウェブサイトでもこの悩ましい問題を取り上げいます。ハノイのある地域では党員の約半数がこうした「活動免除」党員。年に一回も会議に出てこない党員にインタビューすると、「免除なんだから良いだろ、家で寝てるよ!」とつれない回答があったとか。「イデオロギーや党の方針が伝わらない」と嘆いています。

党員は辞めないけど、党員活動は免除。党員資格を剥奪されたり、変に公表されたりもしないので名誉的にも問題ない。これが今風のベトナム共産党員の「正しい辞め方」のようです。

ちなみにベトナム共産党の党員は現在約370万人。年々増加しています。ただしこれにもからくりがあって、新規党員の主力は警察で、年間6000人が党員になっているのだとか。最も「政治的に正し」くなければならない仕事なので党員になるのも当然でしょうが、警察をやめた瞬間に党員もやめる人もかなりいそうです。というわけで、在籍者数ではない、本当に活動している共産党員の数は果たしてどれだけなのやら……。


■「活動しない」という静かな抵抗

ベトナムのような独裁国家では表だった反体制の動きは少ないですし、またその効果も限定的です。ですが、「党員だけど活動はしない」という静かな反抗は党も対応が難しいでしょう。幽霊部員ならぬ「幽霊党員」となって組織を骨抜きにしてしまう。ボディーブローのようにじわじわ効いてきそうです。

またこの現象は、主義主張ではなく、「出世のためだけに」共産党員になる人がどれだけ多いかを示すものでもあるでしょう。これはベトナム人も多くが認めるところです。逆に言えば、共産党員になるかどうかは政治的立場とはあまり関係がないのです。

たとえば日常会話でも、「党員になった?」「まだ。あなたは?早くなっとけば?」「そういうの興味ないし」みたいな話はごく普通です。ただし地域性もあって、南部ベトナムではもう少しセンシティブではありますが。というわけで、ベトナム人の友達に「あなたは党員なの?」と聞いて会話のネタにしてみるのもありかもしれません。どう見てもノンポリだった友達の、意外な一面が見えるかもしれませんよ。

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*本記事はブログ「ハノイで考えたこと」の2013年12月14日付記事を、許可を得て転載したものです。

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