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アニメの真似をして友達を“火あぶり”に、アニメ制作会社にも賠償命令―中国(百元)

2014年01月04日

■中国のアニメの真似をして友達に大怪我をさせた事件、制作会社側にも責任アリという判決に■

喜羊羊
喜羊羊 / dear.God
ありがたいことに「中国のアニメの真似して友達に大怪我させた事件の判決が出た件」に関する質問をいただいておりますので、今回はそれについてを。


■アニメのマネをして友達を“火あぶりに”、アニメ制作会社にも賠償命令

以前に記事「中国で今度は国産アニメが主なターゲットな「アニメ七つの大罪」という批判などが行われている模様」「中国の国民的アニメが暴力的で下品だと批判されまくって全面修正の流れに」でも紹介させていただきました「子供がテレビアニメの真似をして友達に大怪我をさせてしまった事件」ですが、先日この事件に関してアニメ会社が告訴された件の一審判決が出たそうです。

これは中国においてここしばらくの間続いているアニメパッシングの発端となった事件でもあるのですが、簡単に説明すると「中国の大人気アニメ『喜羊羊と灰太狼』を真似して、8歳と5歳の男児が同じ村に住む9歳の男児を木に縛りつけて火をつけ、ひどい火傷を負わせた」というもので、報道によればアニメ制作会社の広東原創動力文化伝播有限公司に対して原告の損失の15%に当たる約3.9万元(約67万円)の賠償を命じる判決となったそうです。

ちなみに火をつけて焼いちゃった方の子供の保護者に対しては原告の損失の60%にあたる約15.7万元(約270万円)の賠償が命じられ、残りの25%の損失は原告の保護者が自分で負担、とされているそうです。判決に関するニュースについては中国のニュースサイトのコチラコチラ(両方とも中国語ですが)などもご参照ください。

アニメ制作会社による損害賠償に関しては、制作側は音響映像製品管理条例の規定以外にも未成年者の権益保護に関する法律の制約を受けるので、行政許可があっても制作側の責任が無いわけではない、「危ない」「マネしちゃダメだよ」といった注意の義務がある……といった辺りが理由となっているようです。

このニュースに関しては中国オタクの間でも話題になっていますので、中国のネットで見かけたその辺に関するやり取りを例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


■中国人オタクの議論

子供が喜羊羊の真似して友達焼いちゃった事件の判決、アニメ会社にも責任アリだと!?これは明らかに家庭教育の問題だろう。なんで保護者の責任を追及しないでアニメ会社に賠償金を要求するんだ?

中国式の教育はどこに向かっているんだろうなー

15%の責任だし、要求された賠償金の多くは前期医療関係だから金額は少ない、しかし責任がアニメ会社まで行ってしまうのか……

なんでバカなガキがやらかしたせいでアニメ会社にまでダメージがいくんだよ。

これはもう、武侠モノの作品とかも、真似したらアウトになるよね!料理アニメに関してもマネしちゃダメだという注意義務が発生するな!!

喜羊羊のキャラは羊……つまり羊を焼いたらアウト……もう羊肉串も焼けないな!
(訳注:羊を串にさして香辛料をまぶして焼く「羊肉串」は中国では非常にポピュラーな食べ物です)

なんで自分の教育が悪いのに、別の所に責任転嫁するんだよ……喜羊羊なんか見るヤツは頭が足りないとかいう話、ネタじゃなくてマジだったのかよ。

中国の子供はアニメを見るのに向いていないということが明らかになってしまったな!

子が子なら親も親だ。別の所に原因を求める。

子供の教育以前に保護者の教育が必要だ。何が危険だとか、何をやっちゃダメとか、何をやったら大事になるかとか、それを教えるのが保護者だろ。今世紀になってから、どんどん親がダメになっているように思う。

でも、アニメ制作会社も安易な表現に走り過ぎていたのは確かだろう。彼等は自分達のターゲットにしている市場が幼年層メインだというのに、それを見る子供、そしてその親が作品をどう見るかを考慮していなかった。子供は何かと真似をするし、親は子供を溺愛するものだということを忘れていた結果がこの判決だ。

日本のアニメ見ているとバイオレンス関係もうまく表現されているというか……なんか真似し難いタイプのものになっているんだよね。ウチの国はその辺ができていない。簡単に真似してしまえるものになっているし、子供がそういったものに対して段々と慣れていってしまい、今回のような事件になっちゃったんじゃないかと。

「バクマン。」に似たようなエピソードあったよね。ウチの国ではこういう結果になるわけか。もう、なんだか叫びたくなってくる。

見える……もうすぐ新たな法律が作られるのが……国産アニメが衰えていくのが……

他の国の子供向けのアニメとか見てみると、こういったことが起こるリスクをきちんと意識して作られているのが分かる。真似をしない様にとい言葉が出たり、子供が簡単に真似できるようなアイテムを使ったりしないとか。中国のアニメは「教育」だとかそう言うのを考える以前のレベルなんじゃないだろうか?まず業界内のルールを整えて意識を改革しないとダメなんじゃないかね。

やはりレーティングが必要だよ。海外では子供が真似をする可能性がある作品にはParental Guidanceが出ている。そういうのを導入しないと、全てがダメになる。

保護者の問題もあるし、ウチの国にレーティングが無いという問題もあるよね。とりあえず保護者の方はどうにもならんから、比較的簡単だと思われるレーティングの方から何とかしよう。

レーティング導入する前に、レーティングに関する認識を整理しないとダメだろう。誤解っぽい所もあるしこっちもそう簡単じゃないぞ。例えば日本の「テレビで放映されている」アニメに関してはレーティングが存在しないのに、ウチの国ではなぜか日本はアニメ「全て」にレーティングがあるような誤報が流れている。まずはアニメ業界全体で一度整理しないとダメだと思うんだが……

レーティングができるなんて考えるだけ無駄。レーティング制度を施行したらエログロバイオレンスな作品の合法性を国が認めることになるんだから。

「国外のアニメが描かないようにしているもの」を研究するのも良いんじゃないかな。国外のレーティングが形成される背景にはそういった事例の蓄積があるだろうし、ある種のいいとこ取りもできるんじゃないかと。

レーティングを導入するとしたら色んなものに向き合って、認めなくてはいけなくなる。どの部門もそんな厄介なことをしたくないだろう。どれだけ叩かれたり足を引っ張られるか。

ウチの国でレーティングを導入するとしても、どこがやるのかというのがまず問題だよね。それに外国のレーティングって、政府が決めてコントロールするものではない。確かに政府機関の影響もあるだろうけど、政府機関じゃない業界団体によるものが多い。まずはそこから考えなければならないし、レーティング導入を単純に叫ぶのはどうかと思う。

私が子供の頃は日本のテレビアニメがイロイロと放映されていたし、真似して遊ぶことも多かったんだけどこういうことはやらなかったな……

「トムとジェリー」とか、現在のウチの国では放映できないだろうね。

「トムとジェリー」はアメリカのテレビの暴力規制の影響で新しい方の作品はかなり作風が変わっているよ。昔ウチの国に入っていたのは規制が入る前のものだったはず。
新しい方ならたぶんウチの国でも大丈夫だろう。しかし、ウチの国のアニメ業界にアメリカのような規制と対応ができるのだろうか……

昔はネットも無かったからこの事件のようなことが起こっても炎上しなかったろうし、テレビのニュースが取り上げる事件の傾向も違っただろうから今回のような事にはならなかったんじゃないかな。この事件は、現在特有の難しさもあるように思う。

何はともあれ、前例が出来てしまったわけだし、アニメ制作会社は戦々恐々だろうな。ウチの国の国産アニメにどういった影響が出るのかイロイロと不安だ。

とまぁ、こんな感じで。


■レーティング制度を導入すべき?!試行錯誤の中国アニメ業界

この件に関しては影響も大きかったですし、「アニメ会社じゃなくて親の責任じゃないか」と憤りを覚える中国オタクの人も少なくないようです。またこの手のアニメの悪影響といった話題に関しては、ほぼ必ず「中国もレーティング制度を導入するべき」という意見を見かけますね。

ただ中国のアニメに関しては国の支援政策の影響が非常に大きいことや、作品放映の際にも様々な審査が必要なこともあってか、政府関係など上の方ばかり見て、視聴者となる子供の方をきちんと向いていないような所も確かにあります。

この事件自体は痛ましいことですが、これをきっかけにして上の方の評価やら何やらだけでなく視聴者の方も向いた作品が増えていったりすれば……などとも考えてしまいます。

それにしても上の発言にもありますが、日本の子供向けの作品はこういった作品の子供への影響と事故に関してはなんだかんだでノウハウを蓄積しながら今に至っているかと思いますが、中国におけるこの分野は近年急速に拡大したこともあり制作側のノウハウだけでなく、社会的な認識も形成されていない所があります。そんな訳で、ある意味かなりめんどくさい状況になっているようにも思えますね。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年12月25日付記事を、許可を得て転載したものです。

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