■日本統治の“植民地”的性格を強調、台湾高校歴史教科書綱要の「反日」的改定とその背景■
DSC04554, Kee-Lung, Taiwan / jimg944
2014年1月27日、台湾の高校歴史教科書の綱要が改訂された。「日本統治時期」は「日本植民統治時期」と表記すること、インフラ建設など日本の統治は台湾住民のためではなく、日本人移民の生活を改善することが目的だったと強調するなどの内容が盛り込まれた。
■反日シフトではなく、台湾は「中国の一部」か「多元的地域」かという対立
歴史教科書の変更点の多くは日本植民地時期に集中しているという。報道によると日本関連の修正点として以下があげられている。
・「日本統治時期」を「日本植民統治時期」に変更
・「統治政策と台湾人の反応」を「植民統治政策と台湾人の反応」に変更。
・「慰安婦」については「強要された」との記述を追加
・インフラ整備などの日本の統治は台湾住民のためではなく、日本人移民の生活を改善することが目的
反日シフトかと思われた方もいるかもしれないが、実は日本がメインの話ではない。つまり、
反日か否かではなく、台湾はさまざまなルーツの人々がやってきて作り上げてきた「多元的地域」なのか、それとも「中国の一部」なのか、という対立なのだ。
日本と関連しない部分の変更点を見ると、その対立点がはっきりする。
・「中国」の表記を「中国大陸」へ
・「オランダの台湾統治」は「オランダの台湾侵入」へ
・「鄭一族の統治」は「明朝鄭一族の統治」へ
・「清代の統治」は「清朝の統治」へ
「中国」と表記すると台湾と中国は別物っぽく感じてしまうので、「中国大陸」と表記してみた。「オランダの台湾侵入」にしてみると、侵入される前には「中国の一部としての台湾」が確固として存在したような気になれるので変えてみたといった具合だ。
実は昨夏にも同様の対立があり、馬英九総統が行政文書の表記を「日治」(日本統治期台湾)から「日拠」(日本占拠期台湾)に変更する決定を下している(
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■台湾の立ち位置をめぐる議論は今なおセンシティブ興味深いのは改定に対する抗議デモのスローガンだ。今回の改定には直接関係ない、「光復」という言葉を使うのはやめろとのプラカードが見られた。二次大戦後、台湾は中華民国の統治に移るが、その記念日となる10月25日は台湾光復(失地回復)節と呼ばれている。しかし日本統治以前に中華民国が台湾を統治していた事実はない。光復とは中華イデオロギーにまみれた言葉だという反発だ。
台湾独立の盛り上がりはすでに過去のものとなった。台湾は経済的に中国本土と深く結びついているし、力関係的にも独立は難しい。台湾の人々もそのことはよく理解しており、最大野党・民進党の内部にも独立綱領を破棄するべきではとの議論もあるほどだ。
しかし盛り上がりが過ぎたとはいえ、台湾は開かれた島なのか、それとも中国の一部なのかという対立はセンシティブな問題であり続けていることを今回の改定騒動は示している。
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