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海賊版アニメを支えた中国ファンサブグループ「字幕組」の黄昏と公式配信(前編)(百元)

2014年02月05日

■中国のアニメファンサブグループ「字幕組」の黄昏? その1 中国でファンサブが盛り上がっていった流れ■

はじめての映像翻訳

■2013年の中国オタク界、最大の変化は「アニメ公式配信の急増」


振り返ってみれば昨年も中国オタク関連でもイロイロなことがありましたが、中国オタク界隈における最も大きな変化は「アニメの公式配信の急増」ではないかと思います。

2011年に暴動関連のゴタゴタが起こり、中国国内で開催予定の各種イベントが大はアニサマから小は同人系のイベントまで中止や延期になるのを見たときは本当に頭を抱えたものですが、そこから一年程の時間でここまでの状況になるとは……・一昔前までは、中国でこんなに多くの日本のアニメが権利の取得のもとで配信されるようになるとは夢にも思いませんでしたね。

さてこのネットにおける日本のアニメ配信の増加ですが、当然ながら中国オタクの面々のオタク的ライフスタイルを大きく変えることにもなっているようです。


■海賊版アニメを支えたファンサブグループ、「字幕組」の変化

このブログをわざわざ読んで下さるような方はご存知かと思いますが、中国に日本のアニメが広まったのはテレビの放映の他にも海賊版やネットなどの非正規ルートの影響が大きく、特に00年代後半以降においてはネットによる非正規ルート、特に中国語系のファンサブグループ、通称「字幕組」によって加工されて拡散された中国語字幕付きアニメの影響は非常に大きなものでした。

このアニメにファンサブ翻訳の字幕を付けてネットに勝手にアップしてしまうファンサブ活動には著作権やファンの態度といったことなどに関してイロイロと問題があるかと思いますが、その辺については既にイロイロな所で語られていますしとりあえず脇に置いて、中国オタク界隈における字幕組とその周囲の環境の変化に関してを例によってイイカゲンにまとめて見ようかと思います。

そんな訳で今回はまず「字幕組」とその背景の流れに関して大雑把に紹介させていただこうかと思います。


■字幕組活動初期

中国本土でファンサブ活動が広く行われるようになったのは、00年代の半ばごろからだと言われています。ファンサブ活動を行う上では、「アニメのデータ」、「翻訳とデータを加工する人間とツール、環境」、「ファンサブ作品を拡散するルート」が必要となりますが、それが中国で整ってきたのが00年代半ばになります。

当時の中国はちょうどブロードバンドが普及していった時期ですし、winnyやshareなどのP2Pファイル共有ソフトを使えば日本の最新アニメのデータが手に入るようになっていった時期でした。

ただこの時期はまだ日本語スキル持ちの中国オタクが少なかったことに加え、翻訳ツールやネットで探せる日本語の例文や翻訳資料といった翻訳環境に関しても今と比べて不便だったことから、ファンサブ活動を行えるのはオタク関係の知識があり日本語能力を身に付けていたごく一部の人間だったようです。そのため当時の中国オタク界隈においてはファンサブ翻訳が貴重な職人芸、最先端のオタク的活動といったような扱いをされていたそうです。

この中国語ファンサブ字幕付きのアニメの登場は

「多くの種類の日本の新作アニメをすぐに見ることができる」
「海賊版業者のやっつけ翻訳や、テレビ放映の作品を理解していない微妙な翻訳や吹き替えではなく、オタクの知識を持った人間によるきちんとした翻訳で見ることができる」

といったことなどから、中国オタクの間で大歓迎されたそうです。


■字幕組活動拡大期

00年代の後半は中国のネット環境の整備やファンサブ動画作成環境の向上、ファンサブ作成者の増加に伴い、字幕組の活動と規模がどんどん広がっていった時期です。ファンサブグループの活動が中心となったフォーラムも賑わっていたそうで、ファンサブ字幕付アニメのデータの配布情報がフォーラムにおける重要な話題となっていたそうです。

またその影響により海賊版の需要が無くなり、それまで様々な対策をしてもなかなか減らなかった海賊版ディスク販売の業者がズンドコ駆逐されていってしまったそうです。

この時期はファンサブ字幕付きの作品によって日本の新作アニメが入るスピードが加速し、入る量も急速に増えていきました。そして段々と日本に新番組をタイムラグ無しで追っかけるスタイルが定着していきましたね。

私の印象ではこの00年代後半辺りから、中国オタクのアニメ作品に関する記憶や感覚が一気に日本に近付いて行ったように思います。

それ以前は入るルートやタイミング、作品の数に大きな違いがあったことから、記憶や感覚についてはちょっとした違いがあったのですが、これ以降は中国オタク内でもアニメ作品の知識がどんどん蓄積されていきました。
中国オタクのアニメ作品に対する感覚の基準や、子供の頃に見たテレビアニメ以外の「名作」「思い出の作品」的な扱いをされる作品に関しては、この時期のものが中心になっているように思います。


■字幕組活動安定期

2010年前後になると、字幕組の活動はいよいよ安定していきますが、中国オタクのアニメ視聴スタイルに大きな変化が起こります。

日本のニコニコ動画的なコメント付き動画サイトが中国オタクの間でも非常に大きな存在となってくるようになり、中国オタク内では「弾幕視頻」(「コメント弾幕」という言葉から来ていると思われます)と呼ばれることになる、ニコニコ動画のコメントによる疑似同期的な視聴により作品を楽しむスタイルが広がっていきます。

中国における動画サイト分野の環境の整備もあり、この「弾幕視頻」でアニメを楽しむスタイルはその後の中国オタクのアニメ視聴スタイルにおいて無くてはならないレベルの存在になっていきます。

また字幕組側にとってもこういった動画サイトに自分達の加工した動画をアップするのは、P2Pやアップロードサーバを通じてのダウンロードによる拡散に比べて作品を見る人間が増える、ダイレクトに反応が返ってくるということで、非常に「面白い」ものとなったそうです。

そして各字幕組の活動や競争の場としてbilibiliやacfunといったコメント付き動画サイトが賑わうことになっていきました。


■現在

そして現在、中国本土でアニメのファンサブ活動が広く行われるようになってから10年程の時間が経ったわけですが、実はアニメに関するファンサブ活動については最盛期よりも落ち込んでいる、元気が無いといった状態になっている模様です。

恐らく最後の盛り上がりは「Fate/Zero」のアニメが放映されていた時期で、それ以降は下り坂になっているという話も聞きます。

この変化については、最近の中国の動画サイトにおけるアニメの公式配信の増加とそれに伴う公式配信の「官方字幕」のクオリティの上昇、更には中国オタク内におけるファンサブ字幕付きアニメの扱いの変化など、イロイロな原因が考えられるそうです。

中国オタクの間における字幕組への思い入れ自体はまだ結構なモノがあるのは間違いないのですが、活動の方に関しては今までに無い方向の変化が出ているのも確かです。

とりあえず今回はここで一区切りとして、次回は中国のファンサブ活動の権利関係以外の問題点や、昔に比べて勢いが落ちている原因などについて紹介させていただこうかと思います。
*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2014年1月3日付記事を、許可を得て転載したものです。

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