中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2014年02月12日
ネットには「日本のコミケはハッジ(メッカの巡礼)に次ぐ世界2番目の動員数」との噂が流れている。大変な規模であることは間違いないが上には上がいる。ハッジに次ぐ「世界第二の巡礼祭」と言われているのがバングラデシュのビッショ・イステマだ。
■世界第二の巡礼祭、ビッショ・イステマ
バングラデシュの一月はビッショ・イステマの季節である。
インターネット検索でbiswa ijtemaと画像検索すると、「ギネス記録に挑戦ですか?」とか「1000人乗っても大丈夫!」とかつぶやきたくなるような、列車に人が鈴なりに乗っている画像が出てきたりする。
このイステマ、もともと1960年代ぐらいから始まったらしい。イステマとは「みんなで集まってお祈りをしよう」という集まりだ。近年、参加者は増える一方で、200万人とも500万人とも言われている。海外からもイステマのためにバングラデシュにやってくるイスラム教徒が少なくない。イスラム教徒の集会としてはメッカについで2番目の規模となる。
会場になるトゥンギはダッカ空港から北へ5キロのエリアである。なぜこの場所が選ばれたのか。預言者モハメッドの遺品があるから、世界で4つある古くからのイスラム教の聖地だったなどなどいろいろな説があるが、たまたまイスラム教会の所有地でみんなが集まりやすい場所が確保できたからというのが実情らしい。
■大混雑とお祭り騒ぎ
祭礼日間近になると近辺の道路は大渋滞を起こす。トゥンギの北にはバングラデシュ最大の縫製工場地帯、ガジプールやサバールがある。出張に来た日本人は「工場に行けない!どうにか行けたとしても今度はホテルに帰れない!」と泣く羽目に遭う。
トゥンギはダッカ市の北端に位置する。ダッカ市民がたどり着くためには最後の10キロぐらいは歩くか、ギュウギュウ詰めで屋根の上まで人で溢れかえった列車に乗ることになる。リキシャなども一応あるが特別料金が必要だ。
祭礼日当日は空港前からトゥンギにアクセスする目抜き通り、エアポートロードが歩行者天国になる。歩行者天国になった道は人々で溢れかえり、道行く人々には水や食料がイスラム教の篤志家からタダで振舞われる。礼拝に向かう人々は信仰心が篤くなる。そんな人々から喜捨を貰えるチャンスとばかりに乞食たちも大勢待ち受ける。
■イステマを支える人々
祭礼日正午過ぎのアスルの礼拝がイステマの盛り上がりのピークである。会場近辺いたる所に置いてあるスピーカーからアザーン(礼拝を呼びかけるメッセージ)が聞こえてくる。その瞬間、混乱と喧騒の中にあった会場に一転、静粛が訪れる。人々は一斉に礼拝を始め、信仰を改めて誓い、神からの祝福を願うのである。このとき、会場に向かう途中で時間になってしまった人々はその場でお祈りを始める。
数年前から参加者の混雑緩和のため、祭礼日を二回に分けて行うことになった。仕事に来た外国人からすると、どんなに混雑してもいいからせめて一回で終わらせてよとぼやきたくなる。
イステマのイベントを支える行政も大変である。トゥンギ管轄のガジプール市は4000基の臨時トイレ、30トンの水、一万人の警察官、100人以上の医者を用意、市の職員は一月中休暇なしでイベントを影で支えている。
ちなみのこのイステマの集まりでは政治の話は一切しないのがルールになっている。参加者たちの振る舞いを見ていると宗教を通じたイベントを楽しんでいるように見え、エンターテイメントのすくないバングラデシュで冬の一大イベントとしての地位を確立している。
関連記事:
試験地獄が生み出す公平な社会、バングラデシュの超学歴社会と少子化(田中)
バングラデシュ名物リキシャに驚きのイノベーション!社会の変化を象徴(田中)
「短パンでもいい、耳の穴だけは守れ!」バングラデシュの不思議な防寒対策(田中)
軍事政権か、それとも民主主義の危機か=総選挙目前のバングラデシュと与野党の攻防(田中)
暗殺された「建国の父」の意志継ぐ大政治家、ハシナ首相とバングラデシュ愛国主義(田中)
バングラデシュ情勢を揺るがす「戦争犯罪」という名の亡霊=死刑判決をめぐり衝突、200人超が死亡(田中)
ガンジーの非暴力運動が超暴力的政治活動に発展、バングラデシュ名物「ホルタル」(田中)
日本企業の凋落、インド企業の台頭、そして国産企業の胎動=バングラデシュ二輪車市場(田中)
(田中)
オッサン「寂しくないか?一緒に寝てやろうか?」、日本人がビックリするバングラデシュ人の距離感(田中)
大政治家になった薄幸の美女、3度目の首相就任が有力となったカレダ・ジアの人生(田中)