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途上国も飽食の時代、バングラデシュのハイカロリー美食とダイエットブームの目覚め(田中)

2014年02月17日

■途上国も飽食の時代、バングラデシュのハイカロリー美食とダイエットブームの目覚め(田中)■
 

Vegetable Biryani
Vegetable Biryani / gagandeepsapra


発展途上国といえば栄養失調者が多いイメージがあるではないだろうか。だがそのイメージは一面的だ。途上国でも太りすぎが問題となっている。最近のWHO(世界保健機関)のレポートでは、貧困国でも生活習慣病が大きな問題だと警告している。

バングラデシュも同様だ。バングラデシュ統計局(2011)発表の都市生活者の10万人当たり死亡率のトップは心臓病および脳卒中で約25%である。大雑把に言うと約4人に1人が生活習慣病に起因する病気で死亡していることになる。

私の知り合いのAさんはある国際機関のプロジェクトスタッフとして働いている。ある時、妻が心臓発作で倒れてしまった。幸い一命はとりとめたものの、医者には夫婦ともども太り過ぎだと警告された。それから毎日1時間以上のウォーキング。米食の回数を減らし肉類の摂取をひかえるダイエットを敢行。90キロ近くあった体重を70キロ台以下まで必死になって減らしていた。


■バングラデシュの美食はハイカロリー

バングラデシュでは労働者階級の多くは痩せすぎにカテゴリーされる。しかし、知識階級になると、多くの人々が肥満に悩んでいる。彼らの生活習慣がそもそも太りやすいためだ。

まず、食事。かつては低カロリーのからし菜油に野菜や小魚をマリネードしたボッタと呼ばれる料理とダール(豆)スープと米飯で食事を済ませていた。ところが最近は、高カロリーのパームオイルや大豆油をたっぷり使った肉料理を毎日のように食べるようになった。

バングラデシュのごちそうは全て高カロリー。ビリヤニと呼ばれる油と肉と香辛料の炊き込みご飯などは明らかに炭水化物とタンパク質と脂質の過剰摂取。太る食事の代表格だ。

歓待好きなバングラデシュ人は誰かを食事に誘うと満腹になるまで食べさせないと気が済まないからお互いカロリーの過剰摂取を押し付けあう形になる。

そして、彼らの夕食の時間が遅いことも肥満に拍車をかける。一般的な夕食のタイミングは夜10時以降。食べてすぐでないと眠れないと言うのだがこれも太る原因となる。


■運動不足と健康ブームの目覚め

また、運動不足も大きな問題である。

上流階級は体を動かす仕事は下層階級にやらせることが文化となっているから、普段から体を動かさない。スポーツもやらない。移動は少しの距離でも車かリキシャに乗る。その結果、筋肉量が絶対的に少なく代謝が悪い。増えた体重を支える筋肉量が足りないから膝や腰を悪くして車椅子や杖を必要とする老人が多い。

最近では肥満対策が社会現象として見られるようになってきている。ダッカ市内では各所にある公園の周囲に遊歩道が設けられている。朝夕にウォーキングをしている人々を最近では多数見かけるようになった。もっともその公園まで自動車を運転手に運転させて入り口に横付けさせるあたり、日本人的には違和感を覚えてしまう。

かつては5つ星ホテルにしかなかったスポーツジムだが、今ではそこかしこで営業している。高級美容整形外科のチラシには「1キロ*万タカで脂肪吸引」などの広告もみかけるようになった。

糖尿病患者も多い。バングラデシュでは町のいたる所に小さな薬屋があり、糖尿病の簡易検査サービスを提供している店を普通に見かける。

バングラデシュではお客さんにとても甘いチャ(ミルクティー)を出す習慣があった。ところが、糖尿病を気にするようになってか砂糖なし、ミルク無しのストレートティーをふるまうことが上流階級の嗜みとなってきている。

いまの肥満で悩む中高年世代が若かった頃のバングラデシュは食糧不足で困っていた。その彼らが今度は食べ過ぎに悩むことになるとは何とも皮肉な話である。

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■執筆者プロフィール:田中秀喜
1975年生まれ。メーカー勤務、青年海外協力隊、JICA専門家を経てバングラデシュでコンサル業を起業。チャイナプラスワンとして注目されながらも情報の少なさから敬遠されがちなバングラデシュの情報源となるべく奮闘中。

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