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Taiwan 2011 / /luca
2014年2月20日、台湾の知的財産法院は、日本のアダルトビデオ(AV)の海賊版DVDを販売した男性2人に、著作権法違反で有罪判決を下した。AVの著作権が認められた判決はこれが初となる(中央社、共同)。
日本メーカーが長年にわたり法廷闘争を続けてきた成果がようやく実った形となったが、完全解決とはほど遠い。というのも今回、台湾の大学教授が16本ものAVを詳細に鑑定、うち3本のみをオリジナリティーがある著作だと認めるという奇々怪々な裁判が繰り広げられていた。
すべてのAVに著作権が認められたわけではない。今後も裁判があるたびに大学教授がAVをじっくり観賞しなければならないという大変な展開になるのだろうか。
■台湾ではAVに著作権はない
台湾ではAVに著作権はない。今回の裁判でも一審ではわいせつ物販売罪では有罪が出たが、著作権違反では無罪となっていた。
記事「アダルトビデオに著作権はない=台湾の不思議な司法と日本メーカーの戦い」で詳述したが、台湾の著作権法では「文学、科学、芸術、あるいはその他学術範囲の創作に属するもの」のみが著作として認められており、1999年にAVは著作ではないとの最高裁判例が出ているためだ。そのため台湾ではAVの海賊版DVDを売り放題、アダルトチャンネルで流し放題という大変な状況となっていた。
こうした状況を改善すべく、日本メーカーが法廷闘争を続けてきたがことごとく敗北していた。
■大学教授の鑑定
このたびついに日本メーカーが勝利したわけだが、完全解決にはほど遠い。というのもAVすべてに著作権が認められたわけではなく、オリジナリティーがある作品にのみ権利が認められるという部分的勝利だったからだ。
気になるのは「どうやってAVのオリジナリティーを確認したのか」、だ。これがなかなか大変な作業を経たものだという。20日付アップルデイリーは、鑑定を担当した台湾大学法律学部の黄銘傑教授にインタビューし、以下のように報じている。
今回、知的財産法院が黄教授に鑑定を依頼したAVは16本。原告、被告が選んだAVからさらにランダムに抽出して対象作品を決定した。黄教授は全16本を2回ずつ子細に鑑賞。最終的に『成瀬心美の童貞おじさん筆おろし』、飯倉えりかの『上司が水着に着替えたら』、そして『青木りんのザ筆おろし』の3本にオリジナリティーがあると判断した。
この3作にはパクリがなく、また一般のAVのように「ひたすら行為に及ぶ」ような内容ではなく、「監督がストーリーと自分の考えを伝えようとしている」ことが判断の理由だと黄教授。
青木りん、成瀬心美の作品は引きこもり男が童貞を捨てる旅を描いたもの。飯倉えりかの作品は中間管理職の女性が部下や上司に情欲を抱いた行為を描いたものだと判決書は指摘している。
鑑定を委託された黄教授は次のように認定している。撮影手法、シナリオの構想ともに作者の個性と独自性を表現するに十分なもので、最低レベルのクリエイティビティーを備えている。ドキュメンタリーやインタビューの形式で作られたもので、ポルノ部分と非ポルノ部分のシナリオは一体になるよう考えられている。独自性を表現するに十分で、純粋なポルノだけの作品ではない。
裁判所はポルノやわいせつの定義は時代とともに変わるものだと指摘。かつてポルノ小説と呼ばれた『チャタレイ夫人の恋人』だが、今では女性の情欲を追求した重要な名作と認定されている。アン・リー監督の映画『ラスト、コーション』もベットシーンがあるが非著作物と認定されることはない。国家はポルノの著作物を適切に規制することができるが、しかしオリジナリティーのあるポルノ作品は著作権を有する。