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2014年02月28日
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中国の全国人民代表大会常務委員会は2月27日、9月3日を「抗日戦争勝利記念日」、12月13日を「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」とする法案を決定した。中国政府全体が日本批判の動きを一気に強化したのではないか……と一見思われるが、冷静に見ると実はある個人が強力にプッシュした産物であり、その影響も限定的だと透けてみえる。
■名ばかり記念日
まず抗日戦争勝利記念日および南京大虐殺犠牲者国家追悼日は国家の「記念日」および「公祭日」である(1)。
これだけ読むと、中国はこの2つの日を国民の祝日として定めたかのように思われるが、実はそうではない。中国には「全国年節及紀念日放仮弁法」という行政規則がある。この第2条によれば、仕事などが休みとなる日は新年、春節、清明節、労働節、端午節、中秋節、国慶節のみだ。
そして「抗日戦争勝利記念日」および「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」の法案は全国年節及紀念日放仮弁法を改正するためのものではない。記念日ではあるが、お休みになる祝日扱いではないわけだ。記念日扱いされている日は多いが、お休みになるなどの実益がなければほとんどの人は記憶することはないだろう。つまり「抗日戦争勝利記念日」および「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」は名ばかりの記念日でしかない。
■鄒建平の活動
ただし南京大虐殺犠牲者国家追悼日はある程度の重みを持っている。というのも今回、追悼日として立法される前から毎年追悼式典が開かれてきたからだ。実質的には以前から記念日になっていたと言えるだろう。
この12月13日の南京大虐殺記念日を正式な国家の公祭日にしようとの提案が初めて登場したのは2005年、江蘇省政治協商会議でのことだった。ただしこの時は否決されている。7年後の2012年、南京芸術学院の鄒建平教授が全国的な公祭日にしようと両会(全国人民代表大会、中国人民政治協商会議)に提案した(2)。
あるいは鄒建平という名に覚えがある方もいるかもしれない。鄒教授は2012年に日本でも話題となった「南京大虐殺否定罪」の発案者だ(3)(4)。南京大虐殺否定罪も南京大虐殺犠牲者追悼日も同一人物による発案なのである。
ある種、南京は鄒教授の持ちネタであり、メディアに取り上げられる鉄板ネタなのだ。
■政治的意図より個人的希望?
朝日新聞デジタルは「国家レベルの記念日とすることで、安倍晋三首相の靖国神社参拝や歴史認識問題を国を挙げて批判していく意思を明確に示すとともに、安倍政権の歴史認識の問題点を国際社会に広く訴えかける狙いがあるとみられる」と報じている(5)。
もちろんこのタイミングで法案が成立した以上、そうした意図は否定できないだろう。ただしその裏側には、鄒建平という人物が一人で作り上げた伏線が存在する。彼の個人的願望が存在しなければ法案が通ることもなかったのではないか。
中国が国際世論に働きかけるべくすべてを計画した……のではなく、日本叩きのツールとしてある個人の主張が使えそうだったから採用してみたというのが実情に近いのかもしれない。
(1)「我国将以立法形式確定中国人民抗日戦争勝利記念日設立南京大屠殺死難者国家公祭日」(新華網ホームページ)〈http://news.xinhuanet.com/politics/2014-02/25/c_119499134.htm〉2014年2月26日閲覧。
(2)「代表建議将南京大屠殺紀念日定為国家公祭日」(sina新聞ホームページ)〈http://news.sina.com.cn/c/2012-03-11/054824094681.shtml〉2014年2月26日閲覧。
(3)南京大虐殺否定罪の報道については、 「『南京大虐殺否定罪』で河村たかしが逮捕される!?」『週刊ポスト』(2012年3月30日号)小学館、156~157頁などを参照。
(4) 「36名代表連名呼吁制定“否認南京大屠殺罪”」(中国環球網ホームページ)〈http://china.huanqiu.com/2012lianghui/ty/2012-03/2511384.html〉2013年7月20日閲覧。
(5) 倉重奈苗(朝日デジタル)「抗日勝利と南京事件を国家記念日に中国、近く決定か」(Yahoo!Japanニュースホームページ)〈http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140225-00000044-asahi-pol〉2014年2月26日閲覧。
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