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構造改革先送り?!中国の7.5%成長目標がなぜ危険なのかについて

2014年03月06日

■構造改革先送り?!中国の7.5%成長目標がなぜ危険なのかについて■

中华人民共和国 人民币元
中华人民共和国 人民币元 / ComerZhao


2014年3月5日、中国の国会に相当する全国人民代表大会が開会しました。初日、李克強首相が政府活動報告を発表したのですが、最大の注目は2014年の成長目標。前年の7.5%から下げてくるのではとの予想もありましたが、結局は現状維持となりました。

「中国経済は弱っているのに7.5%成長なんてムリムリムリムリカタツムリ。どうせ数字ごまかすんやろ」と指摘している人もいますが、逆に「無理したら本当に7.5%成長できちゃうから困るでござる」というのが本当のところ。投資の蛇口を開けば目標成長率は達成しちゃいそうなのですが、そうすると中国経済の構造調整がまたまた遅れてしまうという……。

この辺、中国政府内にも意見の分岐があったようで、楼継偉財政部長は「7.3%も7.2%も7.5%前後に含まれる」 と恨みがましい発言をしています。0.5%刻みで考えると7.2%は7.0%に近くないですかと聞きたくなるところですが、政府目標値を下回るのもありなんやでと必死の抵抗です。


■7.5%成長しちゃったら何が悪いのか問題

成長率が高くて何か悪いことあるのか?楽しくていーじゃん!と考えるのは当たり前の話。それがなんでいけないのかについては津上俊哉さんが著書『中国台頭の終焉』『中国停滞の核心』で解説しています。本サイトにもそのブックレビューがありますので興味がある方はご参照ください(文末にリンク)。

それだけだと寂しいので、ゴールドマンサックスの哈継銘氏の講演録がわかりやすかったので、一部を紹介します。ざっくり訳であることはご了承ください。面倒な人は太字のところだけ拾い読みしていただいても。

中国経済のアンバランスってどんな感じでしょう?

以前は内外ともにアンバランス と言われてきました。外とはGDPに占める輸出の比率が高すぎるというもの。こっちはすでに下がったんですが、内のアンバランスはますます悪化しています。GDPに占める投資の比率が大きすぎるのです。

2012年の統計でその比率は47.8%。2013年の統計はまだ発表されていませんが、我々の計算では52.5%にまで上昇しています。いわゆる構造調整というのはこの比率を下げることが目的なんですが、下がるどころか上がってしまったという。

この52.5%ってどういうレベルだと思います?日本では1970年代、韓国では1990年代にこの比率が マックスに達したんですが、それでも40%。どう考えても中国の数字は大きすぎます。たんに数字が大きいだけじゃなくて、投資比率の上昇周期が長すぎるってのも問題です。以前は平均4年半で上昇終了だったんですが、今回は2000年から13年間連続で上昇中。この13年間にどれだけの生産能力過剰が、どれだけの債務が生み出されてきたことやら。

このアンバランスをたださないといけないわけですが、必要なのは一に決意、二に時間です。

習近平政権が2022年までの任期内に現在の52.5%という数字を合理的な水準、例えば40%にまで下げると決めたとしましょう。まあ40%も日韓のマックス値ですから合理的かどうかはなんとも言えませんけどね。もし1年で40%まで下げたら、経済崩壊です。じゃあ8年で下げるとするならばどうなるか。今年の成長率は7%を超えるべきではありません。我々の推算だと6%前後。その後数年間の成長率もちょっとずつ下げてこの構造調整は実現するのです。

いやいやいや52.5%でいいやんけ。もっと高くてもいーじゃん。そう仰る人もいるでしょう。いい質問です。何十年も投資比率は上昇してきたのにここでストップさせる理由ってなんかあるの?ってことですね。ですが、答えはちゃんとあります。というのもこれまでは人口ボーナスがある、つまり労働人口が上昇し続ける時代だったのです。 貯蓄率も年々上昇。銀行は毎年新たな預金を獲得するし、社会にはごっそり遊休資本が眠っているという状態でした

ですがね、2015年が転換点です。貯蓄率は下がります。新規の銀用預金も遊休資本も減ります。したら今みたいに信託商品の借り換えも出来なくなるわけです。その時になってから困るっていうのはお子様のやり方ですよね。早めに解決しないとバブルはもっと大きくなってハードランディングを迫られるわけです

以上がなぜ構造調整が必要なのか、なぜ残された時間は多くないのか、なぜ構造調整がソフトランディングにつながるのか、なぜやらないとハードランディングになるのか、その理由です。


■昨年も吠えていた楼部長

投資比率が高すぎる問題は外部の人間が騒いでいるだけではありません。中国政府内部にもこの問題を深く認識している人が多いのです。昨年前半、李克強首相率いる国務院は投資抑制に邁進する姿勢を表明しました。その時、最もアグレッシブな態度を見せたのが冒頭で紹介した楼継偉部長。「6.5%まで落ちてもたいした問題ではない」と発言し、ちょっとした話題となりました。

ところが景気減速が騒ぎ立てられるなか、成長減速許容の姿勢はあっという間に消滅。「微刺激」と呼ばれる景気対策が導入され、2013年の年間成長率は7.7%と政府目標の7.5%を上回る水準をキープすることになりました。まあ目標を下回ると政府の責任が追及されかねないので理解できないわけでもないのですが、だからこそ今年の目標値は7%ぐらいにしとくべきだったんじゃないの、という声が大きかったわけですが……。

個人的には「昨夏ぐらいに李克強首相が経済改革の主導権を失ったんじゃないか派」に心が傾いていまして、昨年のような李克強主導の豪腕投資抑制モードは今年はないのかななどとも思ったりするわけですが、楼部長の負け惜しみ的7.2%発言が具体的な力を持ち得るのか、気になるところであります。

というわけで成長率とGDPに占める投資比率がどうなるのか、今年も楽しみに見ていきたいと思います。

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