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2014年03月17日
「中国ドラマ検閲、秘密の規定」 という記事が注目を集めている。初出は東南網のよう。先日閉会した全国政治協商会議の文芸界グループの討論で話題となったドラマ検閲の基準についてとりあげたものだ。
検閲といえば政治ネタばかりとの印象を持っている方もいるだろうが、どうしてどうして。人民の父母たる共産党は「道徳」の分野にまでとやかく口出ししている。
■中国ドラマ検閲、秘密の規定
1:主人公は浮気性であってはいけない。愛人は幸福になってはいけない。
「テレビドラマコンテンツ管理規定」第5条第9項では、公共道徳と民族の優秀な文化伝統を損なってはならないと定義されている。そのため浮気や愛人をプラスに描くことはご法度。
ドラマ「心術」ではもともと呉秀波演じる役どころが主役の予定だったが、複数のセックスパートナーを持つ というキャラ付けのために脇役扱いに。ドラマ「譲愛做主」ではシュー・ジンレイがひたすら愛を求める愛人キャラを演じたが世論の批判の的に。その後のドラマでは愛人は「反面教師」として描かれるようになった。先日人気となったドラマ「我們結婚吧」では、愛人は流産し正妻に謝罪するという結末を迎えた。
2:一人っ子政策違反は描かない
「テレビドラマコンテンツ管理規定」第5条第11項では法律法規に違反する内容を禁止している。そのため一人っ子政策違反の内容は描けない。明らかに一人っ子政策適用後の若い世代が複数の子どもを生んでいたり、あるいは未婚の母というのはダメ。
ドラマ「未婚妻」では未婚での出産が検閲を通らず、最終的に内容を変更しての放送となった。「小爸爸」では米国人女性との間に生まれた子ども、しかも男性側は妊娠を知らなかったという設定で一人っ子政策違反をクリアした。
3:幽霊はダメ。「異能」の存在は子ども向けドラマだけ
「テレビドラマコンテンツ管理規定」第5条第5項では邪教・迷信の宣伝禁止を規定。幽霊、妖怪、魔物の類は迷信なのでバツ。凡人が仙人になるというエピソードはバツ。ただし仙人になった後の善行を描くのはOKだという。宇宙人といった「異能」の存在は子ども向けドラマにしか許されない。
4:学校内での恋愛、暴力の描写は禁止
「テレビドラマコンテンツ管理規定」第5条第10項では青少年の心身の健康を損なう内容は禁止と規定。勉強の邪魔になるような恋愛はよろしくないという観点から小中高校生の恋愛については検閲対象となる。暴力などもってのほか。2003年の台湾ドラマ「花より男子」は拝金主義や校内暴力を理由に放映禁止に。「花より男子」を原作とした「一起去看流星雨」は中学でも高校でもなく、“予備学校”という中国国内には存在しない謎のカテゴリの学校を作り出して検閲を回避した。
■テレビドラマコンテンツ管理規定
上記で紹介した記事は「テレビドラマコンテンツ管理規定」第5条をもとに違反例を列挙している。せっかくなので第5条を訳出してみた。
「テレビドラマコンテンツ管理規定」第5条
テレビドラマは以下の内容を描いてはならない。
1:憲法が確定した基本原則の違反。憲法や法律、行政法規、規定の実施を拒否し破壊することを扇動する内容。
2:国家の統一、主権と領土の一体性を損なう内容。
3:国家機密の流出、国家安全に対する危害、国家の栄誉と利益を損なう内容。
4:民族の恨み、差別を扇動し、民族風俗の習慣を侵害する内容。民族感情を傷つけ民族の団結を破壊する内容。
5:国家の宗教政策に違反し、原理主義や邪教、迷信、差別を宣伝し、宗教信仰を侮辱する内容。
6:社会秩序を乱し、社会の安定を破壊するもの。
7:淫らなもの、賭博、暴力、恐怖、ドラッグ、犯罪教唆、犯罪方法の伝授
8:他者を侮辱し誹謗する内容。
9:公共道徳や民族の優秀な文化的伝統に危害を与えるもの。
10:未成年の合法的権益を侵害し未成年の身心の健康を損なうもの。
11:法律、行政法規、規則が禁止するその他の内容。