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日清戦争は汚職で負けた!いやいや北洋海軍は最強っす!中国官制メディアで不思議な議論(水彩画)

2014年04月04日

■「北洋海軍は最強。いや腐敗していた」党中央と中紀委の代理戦争か■


■2014年と1914年と1894年

2014年1月のダボス会議に出席した安倍首相は、現在の日中の緊張状態を第一次大戦前の英国とドイツの関係になぞらえて発言しました。優しく解釈してあげると、貿易関係が深かった英独だって戦争になったんだから日中も気をつけなきゃねという意味合いなのですが、意地悪に解釈すれば「一次大戦前の英独?開戦必至だ!」となるわけで、ちょっとした騒ぎに。

ちなみに3月8日に開かれた両会の記者会見では、王毅・外交部長が「2014年は1914年でも1894年でもないですから」と嫌みを一発。まあ安倍首相の発言は誤解を招くこと間違いなしだったので、仕方ないのですが……。

さて、ここで1914年(=一次大戦が起きた年)に加えて1894年が持ち出されています。この年は日清戦争の起きた年です。今年はちょうど開戦120周年ということで盛り上がっています。「日清戦争のドサクサに奪い取られた尖閣」ネタもその一環。「釣魚島の真実」なんて素敵なタイトルのプロパガンダ映画を、ドイツ人の御用監督に撮らせ、海外公開して中国の大好きな国際社会の取り込みに余念がありません。今年は党中央主催で、日清戦争関連のビッグイベントがあるかもしれませんね。


■日清戦争は汚職で負けた?

ただ尖閣絡みだけではなく、なぜ日清戦争に負けたのかなんていうネタも議論されているようで、ちょっとしたもめ事が起きています。

問題となった記事は人民解放軍機関紙・解放軍報のコラムです。要約すると、

当時の中国海軍のトン数は日本と遜色はないが、傲慢極まりない軍人は大金を積んで呼んできた外国人教官を嘲笑しており、学習熱心な日本海軍とは明確な差が生まれた。

清軍が直面した多くの挑戦は、人民解放軍が現在闘争中のものだ。それは縁故採用や派閥闘争、汚職行為も含まれている。この現象が続き、日中両国で軍事衝突が起きれば、解放軍はまた負ける。
解放軍、日清戦争から教訓を得るべき「腐敗、派閥逃走は失敗を招く」(新華社 2014/3/24) 
というもの。

解放軍内部に「縁故採用や派閥闘争、汚職行為」が存在しており、放置できないとの文脈で持ち出したと考えられます。この記事が「解放軍報→香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト→参考消息→新華社」と一回、香港を経由して本土に戻ってきているのが面白いところです。

たんに汚職はあかんよ、紀律をきちんとしないと戦争に勝てないよという、ありがちなお説教にも見えるのですが、しかし近代の歴史解釈は党中央にのみ権利があります。コラムのネタとして引き合いに出しただけとはいえ、見過ごせないネタとなったのでしょうか。なんと反論記事が出ています。


■異例の反論記事

専門家「『北洋海軍腐敗説』は日清戦争を読み誤る」(新華社 2014/3/28)
2014032901

その反論ですが、なぜか参考消息に掲載されました。ウェブ版には書いていないのですが、紙面には「新華社解放軍支社と本紙(参考消息)の合同発表」とでかでかと書いてあり、新華社がかんでいる事が分かります。参考消息は海外の情報を翻訳、掲載する新聞なので異例です。

反論の内容はというと、「北洋海軍は最強に強まっていたが、清政府が終わってたから負けた」というもの。軍は強かったのだ!悪かったのは旧政府ということのようで。

出発点の記事が解放軍報なので、解放軍内部の対立のようにも見えますが、どちらかというと紀律検査部局が書かせた「汚職よくない」記事が、一部の人々の逆鱗に触れ、「中国共産党の正しい歴史」に干渉する内容だったため、党中央があわてて反論を書かせたのではと見ています。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年3月29日付記事を許可を得て転載したものです。

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