2014年5月25日、ソニーのパナソニックの有機EL事業売却が報じられました。有機ELの技術はすでに完成しているが、歩留まりが悪くコスト的に液晶には勝てないとの判断です。
このニュースからさかのぼること1週間ほど前、17日にNHKが放送した「
ドキュメンタリーWAVE:アジアの黒衣 動く~日本人技術者を取り込む台湾企業~」では、世界最大のEMS(電子機器受託生産)企業・鴻海が独自に有機EL製造に乗り出そうとしているという話を紹介していました。日本企業の撤退と鴻海の挑戦。その対照的な構図が象徴的です。
ずっと研究を続けてきた日本企業ですら断念したのに大丈夫なのかと気になるところですが、その手法が面白い。集められた技術者は元シャープ、元日立、元ソニーなどの日本人。ちなみに元ソニーの千葉さんという方はソニーで有機ELをずっと研究したあげく、サムスンに移り有機EL量産化を手助け。そして鴻海へという面白い経歴でした。製造機械も日本の中小企業が開発した新技術を採用することで勝負になるのではないかという判断です。
日本の技術をかき集めて一気にキャッチアップしようという判断もさることながら、鴻海の郭銘台会長の決断力も驚くばかり。日本人技術者を集めたチーム結成からわずか5カ月で一定のめどをつけろ、ゴーサインが出せる状態なら中国に有機EL用新工場を新設するという猛スピードで話は進みます。
博打的とも思える判断ですが、中国の自動車メーカーが携帯電話組立にも参入するなどEMS業界の競争が激化するなか、たんなる価格競争に巻き込まれないためには独自技術が必要。そのために有機ELに白羽の矢がたったという話で、勝負手を放たなければ競争で埋没するという危機感が背景にあります。
もともと技術的にはリードしていた日本企業が二の足を踏む間に、無理筋でも突撃して商品販売を続ける韓国、後発でもまだ間に合うとアクセルを踏む台湾=鴻海。アジアのスピードに追いつけずにいる日本の停滞を象徴するかのようなエピソードでした。
■余談