• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

ソニー・パナが有機EL事業売却=日本人技術者を雇って有機ELに挑む台湾・鴻海(高口)

2014年05月26日

2014年5月25日、ソニーのパナソニックの有機EL事業売却が報じられました。有機ELの技術はすでに完成しているが、歩留まりが悪くコスト的に液晶には勝てないとの判断です。

このニュースからさかのぼること1週間ほど前、17日にNHKが放送した「ドキュメンタリーWAVE:アジアの黒衣 動く~日本人技術者を取り込む台湾企業~」では、世界最大のEMS(電子機器受託生産)企業・鴻海が独自に有機EL製造に乗り出そうとしているという話を紹介していました。日本企業の撤退と鴻海の挑戦。その対照的な構図が象徴的です。
 

ずっと研究を続けてきた日本企業ですら断念したのに大丈夫なのかと気になるところですが、その手法が面白い。集められた技術者は元シャープ、元日立、元ソニーなどの日本人。ちなみに元ソニーの千葉さんという方はソニーで有機ELをずっと研究したあげく、サムスンに移り有機EL量産化を手助け。そして鴻海へという面白い経歴でした。製造機械も日本の中小企業が開発した新技術を採用することで勝負になるのではないかという判断です。

日本の技術をかき集めて一気にキャッチアップしようという判断もさることながら、鴻海の郭銘台会長の決断力も驚くばかり。日本人技術者を集めたチーム結成からわずか5カ月で一定のめどをつけろ、ゴーサインが出せる状態なら中国に有機EL用新工場を新設するという猛スピードで話は進みます。

博打的とも思える判断ですが、中国の自動車メーカーが携帯電話組立にも参入するなどEMS業界の競争が激化するなか、たんなる価格競争に巻き込まれないためには独自技術が必要。そのために有機ELに白羽の矢がたったという話で、勝負手を放たなければ競争で埋没するという危機感が背景にあります。

もともと技術的にはリードしていた日本企業が二の足を踏む間に、無理筋でも突撃して商品販売を続ける韓国、後発でもまだ間に合うとアクセルを踏む台湾=鴻海。アジアのスピードに追いつけずにいる日本の停滞を象徴するかのようなエピソードでした。


■余談

鴻海の郭会長はなんとも強烈なキャラです。先日、「民主主義じゃメシは食えない」と発言し炎上したという一幕も(参考記事)。番組でもその強烈なキャラクターは鮮明に描かれていました。

ある日の経営会議で幹部社員に「グーグルがボストン・ダイナミックス会社を買収した」というニュース映像を見せる郭会長。同社はかつてネットで話題になった「気持ち悪いロボット」Big Dogを開発しています。「うちも米国や日本でこういう会社をかいまくらんとダメだ」と檄を飛ばした後、「ところで君たち、この(気持ち悪いロボットの)動画を見た?私は見たよ。ネットで流行ってるんだよ。なんで見てないの?そういうところが……」とくどくどお説教。

いやー、こういうボスの下で働くのはきつそうだと痛感しました。

関連記事:
「民主主義じゃメシは食えない」鴻海集団会長の炎上発言=台湾立法院占拠と“通りすがり”(高口)
反日デモが生み出したホンハイ・フォックスコン工場の暴動=ガス抜き論は妥当なのか?―中国
iPhone工場で暴動、工場などを破壊=強面警備員の服装チェックが原因か―中国
「iPhoneは米国では作れない」スティーブ・ジョブズの言葉=製造業の米国回帰を考える
中国アップル関連工場で137人に健康被害=外資バッシングに拡大する可能性も―翻訳者のつぶやき


トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ