中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2014年05月26日
2014年5月25日、法制晩報は中国31省・市の大学入試特別加点の新規定が公表されたことを取り上げた。中国の大学入試は基本的に「高考」と呼ばれるセンター試験風の一発勝負の試験で決まる。二次試験はなく、本当に一発勝負で決まるのが日本と違うところ。
ただ自治体のスポーツイベントで好成績を残したり、数学オリンピックで受賞したり、あるいは少数民族だったり、優秀学生幹部(!”)だったりと、条件を満たすとその試験の成績に加点することができる。内申点のようなものといえばわかりやすいが、試験結果に直接足すという方式はなんとも露骨。日本に置き換えたら「甲子園に出場したらセンター試験の成績に10点加算」という形式だろうか。
今回の改革では追加点の項目が削減されたり、あるいは加点が低く抑えられた。北京市ではスポーツ関連の加点が従来の15項目から10項目に減少。少数民族の加点は10点から5点に低下。優秀学生幹部の加点は20点から10点に減っている。
背景にあるのは「一般市民のねたみ」だ。中国も大学定員増に伴い、「四大卒=エリート」という状況ではなくなっているのだが、いまだに「大学入試が一生を決める」という観念は根強い。お隣の息子さんはマイナースポーツで好成績をあげていい大学に入ったんですって、ボクも少数民族だったら名門校に入れていたのに、的な不満が高まっていた。
さて特別加点が軒並み減少しているなか、逆に存在感を増しているのが「思想品徳及び勇敢なる正義の行動」だ。北京市、浙江省、四川省では20点のプラス。その他10省・市では10点のプラスとなっている。ちまちま練習してスポーツ大会で好成績をあげるよりも、川でおぼれている人を助けるほうがよっぽどポイントが高い。
中国紙を見ると、「良い心の学生に加点なんだからいいことなんじゃね」との論調が目立つが、思想品徳なんかはいくらでも恣意的に操作できそうだし、勇敢なる正義の行動も加点目的で目の色変えて人助けを狙う受験生が出現するだけではないかと心配してしまうのだが……。
関連記事:
人助けにも許可証がいる時代?!ネット民の怒りと政府の弁明―河南省
中国版『三丁目の夕日』=80年代工場労働者の古き良き時代を描く青春ドラマを見た―中国農業コラム
警察発表とネットの噂、どちらを信じます?交通事故に見る中国羅生門的世界
中国「道徳崩壊」の象徴、彭宇事件の意外な「真相」=捏造の連鎖は続くよどこまでも
【動画】車にひかれ動かなくなった2歳の少女と見て見ぬふりをする通行人―広東
誰かを川に突き落として、救助する、
という人間が現れそうで怖い。