中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2014年05月27日
興味深いのはどちらも最前線に「漁船」が立っているという点。巡視船同士でばちばちやりすぎるとエスカレートする可能性があるので、一応民間という名目の漁船を前面に立てるというリスクヘッジを行っています。政府が動員したのはばればれなのですが、これもまあ様式美というべきでしょうか。
■第二段階とは何か?
漁船沈没の翌日、27日にもちょっとした動きがありました。今回の中越対立の発端となったのは、中国・中海油田服務株式公司による海底油田採掘プラットフォームの設置です。27日、同社は「プラットフォームを移動させ、第二段階の作業に入った。作業は8月中旬終了に予定」と公式サイトで発表しました(NHK)。
今回のプラットフォーム設置はあくまで探査活動のためのもので、本格的な生産につながるものではありません。第二段階というので分からなくなるのですが、今後も場所を変えながらボーリング探査を続けるものと思われます。8月まで中越のつばざりあいが続くことになりそうです。
■中国の狙いとは
さて、今回の中国による探査は何を目的としたものなのでしょうか?いくつか説があがっています。第一に「米国への報復説」。4月末、アジア歴訪したオバマ米大統領がフィリピンと新たな軍事協定を結びました。探査の発表は5月2日だったのでタイミング的にどんぴしゃなのですが、しかし「フィリピンでの仇をベトナムでとる」というのはあまりにも愚か。いやがらせをするならば相手はフィリピンになるはずです。
第二に「周永康率いる石油閥の陰謀」という話があります。前中国共産党政治局常務委員の周永康氏の逮捕は間近……と言われてそろそろ1年ぐらいたつのですが、石油閥のボスの危機を救おうと配下がもめ事を起こし、習近平にいやがらせをしたという説。これも分からないではないのですが、2012年の反日デモも周永康一派の差し金だったとささやかれるなど、「なんでもかんでもとりあえず周永康のせいにしておこう」という論客(警察のボスだった周永康にひどい目にあわされた法輪功系メディアが筆頭です)が多いので、いまいち納得しづらかったり。
個人的に一番ありそうだと思っているのが、「中国はやりたいことを着々とやっているだけ」説。エネルギー確保にやっきになっている中国、水深が深い南シナ海でもそろそろ技術的に採掘がいけそうなんじゃないかと準備を進めてきました。相手国や国際社会の批判が高まると小休止するのですが、しばらくたつとまた活動再開という動きを続けています。今回のその一環ではないでしょうか。中国もメンツがあるのでベトナムの抵抗で撤退するわけにもいかず、8月までボーリング作業を実施した後小休止すると踏んでいます。
関連記事:
「我慢にも限界がある」南シナ海で中国と衝突、ベトナム現地の反応(いまじゅん)
中国「民間」漁船が南シナ海で大規模操業=漁民の失言で中国政府の支援が発覚
中国軍艦がベトナム漁船に発砲=尖閣対立の裏で深まる南シナ海問題
【南シナ海問題】ベトナム人が語る中越関係=尖閣諸島から南沙諸島へ―北京で考えたこと
2011年南シナ海問題が残したもの=東南アジアの軍拡競争