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最前線は漁船が担当、南シナ海の中越対立を考える(高口)

2014年05月27日

 ■漁船が“最前線に”

南シナ海での中国とベトナムのつばぜりあいが続いています。

26日にはベトナムの漁船が沈没する事故も起きました。ベトナム側発表によると、中国の漁船約40隻に包囲され、体当たりされて沈没したとのこと(時事通信)。 一方、中国側は「ベトナムの漁船が中国の漁船に体当たり、その後転覆した」と説明しています(新華社)。
 

興味深いのはどちらも最前線に「漁船」が立っているという点。巡視船同士でばちばちやりすぎるとエスカレートする可能性があるので、一応民間という名目の漁船を前面に立てるというリスクヘッジを行っています。政府が動員したのはばればれなのですが、これもまあ様式美というべきでしょうか。


■第二段階とは何か?

漁船沈没の翌日、27日にもちょっとした動きがありました。今回の中越対立の発端となったのは、中国・中海油田服務株式公司による海底油田採掘プラットフォームの設置です。27日、同社は「プラットフォームを移動させ、第二段階の作業に入った。作業は8月中旬終了に予定」と公式サイトで発表しました(NHK)。

今回のプラットフォーム設置はあくまで探査活動のためのもので、本格的な生産につながるものではありません。第二段階というので分からなくなるのですが、今後も場所を変えながらボーリング探査を続けるものと思われます。8月まで中越のつばざりあいが続くことになりそうです。


■中国の狙いとは

さて、今回の中国による探査は何を目的としたものなのでしょうか?いくつか説があがっています。第一に「米国への報復説」。4月末、アジア歴訪したオバマ米大統領がフィリピンと新たな軍事協定を結びました。探査の発表は5月2日だったのでタイミング的にどんぴしゃなのですが、しかし「フィリピンでの仇をベトナムでとる」というのはあまりにも愚か。いやがらせをするならば相手はフィリピンになるはずです。

第二に「周永康率いる石油閥の陰謀」という話があります。前中国共産党政治局常務委員の周永康氏の逮捕は間近……と言われてそろそろ1年ぐらいたつのですが、石油閥のボスの危機を救おうと配下がもめ事を起こし、習近平にいやがらせをしたという説。これも分からないではないのですが、2012年の反日デモも周永康一派の差し金だったとささやかれるなど、「なんでもかんでもとりあえず周永康のせいにしておこう」という論客(警察のボスだった周永康にひどい目にあわされた法輪功系メディアが筆頭です)が多いので、いまいち納得しづらかったり。

個人的に一番ありそうだと思っているのが、「中国はやりたいことを着々とやっているだけ」説。エネルギー確保にやっきになっている中国、水深が深い南シナ海でもそろそろ技術的に採掘がいけそうなんじゃないかと準備を進めてきました。相手国や国際社会の批判が高まると小休止するのですが、しばらくたつとまた活動再開という動きを続けています。今回のその一環ではないでしょうか。中国もメンツがあるのでベトナムの抵抗で撤退するわけにもいかず、8月までボーリング作業を実施した後小休止すると踏んでいます。

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