今、中国メディアではオーストラリア批判が真っ盛り。ちょっと興味深い動きなのでご紹介したい。
安倍晋三首相は2014年7月7日から9日にかけてオーストラリアを訪問した。日豪EPAと防衛装備品・技術移転協定に調印したほか、首脳会談では「東シナ海及び南シナ海の現状を変更するいかなる一方的な試みにも反対」することを確認。またアボット豪首相が集団的自衛権解禁に賛意を示すなど盛りだくさんの外訪となった。
これに反発したのが中国。まあ上述の内容を見ればわからなくもないのだが、それだけではない。批判の矛先が集中したのはアボット首相の発言だった。
Sydney Harbour, Australia / kevgibbo
“We admired the skill and the sense of honour that they brought to their task although we disagreed with what they did. Perhaps we grasped, even then, that with a change of heart the fiercest of opponents could be the best of friends”
The Diplomat、2014年7月12日
「旧日本軍の技術と使命達成の精神はすごいよね。いや、やったことは褒められないけどね。まああれや、強敵が最良の友人に変わるってことがわかったね」といった内容。
これに中国メディアは猛批判。退役中将の王洪光氏は
環球時報に「オーストラリアが中国を友好国とみなさないなら、中国だってオーストラリアを友好国と見なす必要はない」との内容のコラムを寄稿した。
また中国外交部の洪報道官は
「二次大戦において日本ファシズムの侵略者はオーストラリアを含む多くの国の人民に多大な災厄をもたらした。その侵略手段はきわめて残忍で、良心を欠いたもの。もし報道が事実ならば、良識がある者は誰もが豪州指導者の関連する発言に同意しないと信ずる」
とコメントしている(
中国外交部ウェブサイト)。
アボット首相の発言は新華社英語版が報じたようで、英語メディアも新華社をソースに報じているようだ。中国の反発を報じた
共同通信が「技術と精神」の話を完全スルーしていることをみても、本当にこの発言があったのかちょっと怪しく思ったりもする。
それはともあれ、中国の反発もあり、野党・労働党のビル・ショーテン党首をはじめ豪州内部からも「日本にリップサービスしすぎじゃね?日本と中国のどっちかに肩入れすると見られたらあかんで。等距離外交や!」との声が上がっている。
日本としても外交の目的は中国包囲網の形成ではなく、中国を多国間の話し合いのテーブルにつかせ、法の支配を遵守させることにある。熱いリップサービスのあげくに中国ともめてしまうよりも、日本とも中国とも淡々とお付き合いしてくれるほうが得策だろう。その意味ではアボット首相の姿勢は日本にとってもちょっぴり迷惑なものだったと言えるかもしれない。
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ちょっと一人相撲をしてしまいました。