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2014年07月17日
■新政府の誕生から終焉
河南省鄧州市に「新鄧州市人民政府」が誕生したのは2013年9月のこと。裁判では主犯格と認定された農民・張海新に馬相蘭、王両双という女性2人の計3人だけの新政府誕生である。
現行鄧州市政府の「不作為」を批判しその撤回を宣言した。新政府は鄧州市人民政府の旗下に文渠郷人民政府、高集郷人民政府、汲灘鎮人民政府という3つの下級政府を設置。3人がそれぞれトップを務めるという構成となった。市全体のトップは張。
新政府設立の宣言だけならば誰でもできるわけだが、この3人はここからがすごい。新政府のハンコを作り、鄧州市人民政府の名の下、ばんばん公文書を発行したのだ。さらに新政府は公務員の募集も実施。10人以上の大学生が履歴書を送ってきていた。
また新政府の認可がなければ建築許可はまかりならぬとして建設業者らに違法建築建設停止の通達書を送りつけていたという。通達書を受けて200人以上の農民が新政府で建築許可の申請を行っている。それなりの手数料はいただいていたはずなので新政府には財源もあったわけだ。最終的に通達書を受け取った不動産開発業者が不審に思い通報。新政府は誕生からわずか数カ月で終焉を迎えた。
6月27日、鄧州市第一法院で判決が言い渡された。主犯格とされた張が懲役2年。馬が懲役10カ月、王が懲役8カ月という量刑だ。新政府樹立をなしとげた3人にとってはあまりにも軽い量刑に思えるが、実は罪状は「国家機関公文書偽造」のみ。現行政府を撤廃させたなど革命行為についての罪は問われていない。
一方、「官僚の資産公開を」と呼びかける市民運動を主導した許志永氏は今年1月、懲役4年の判決を食らった。市政府を転覆させた英雄の量刑がこの程度で済むとなると、許氏をはじめとする人権活動家に対する重い量刑はやはりおかしいような気がするのだが……。
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