2014年8月7日、中国政府はスマホ向けメッセージアプリを念頭に置いた規制を公布、即日施行した。
ツイッター型のオープンなSNSであるウェイボー(微博)に続き、LINE型のクローズなSNSであるWechat(微信)などのメッセージアプリの検閲も本格化させた意味合いがある。
wechat / Sinchen.Lin
■メッセージツール・公衆情報サービスの発展管理暫定規定
新華社を通じて発表された規定は「即時通信工具公衆信息服務発展管理暫行規定」という名称。日本語訳すると「メッセージツール・公衆情報サービスの発展管理暫定規定」となる。
「メッセージツール・公衆情報サービス」と中黒が入っているのがミソ。メッセージツール(スマホ向けメッセージアプリを念頭に置いた用語だが、スマホに限定していないので字面をよむ限りパソコン限定のサービスも対象になりそうだ)を提供している企業だけではなく、そのサービス上で展開される公衆アカウント(企業アカウントなど多数のユーザーに情報を提供するもの)に対する規制も含まれているのだ。
さて、具体的な規制だが、
・メッセージツール提供者も公衆アカウント提供者も関連の資格を取得するべし(具体的な規定はなし)。
・メッセージツール提供者は違法書き込み・不良書き込み削除の通報に対応する専属スタッフを配置せよ
・メッセージツール登録は実名制必須。ただし他のユーザーに対して実名を公開するかどうかはユーザーが選択する。
・登録時には「法律法規、社会主義制度、国家利益、公民の合法的権益、公共秩序、社会道徳、情報の真実性の遵守」という「七つの守るべき一線」の遵守をユーザーに同意させる
・公衆アカウントの登録にあたっては審査を実施し、その内容は当局に報告すること
・報道機関資格を持つ企業の公衆アカウントはニュースの掲載を許可。ネットニュース資格を持つ企業は転載のみ可。その他の公衆アカウントは許可がなければニュースの掲載、転載はできない。
・メッセージツール提供者はニュース掲載資格を持つ公衆アカウントになんらかのマークをつけるべきである。
■ウェイボー規制からWechat規制へ「民草に愛される、古き良き中国共産党の復活」がテーマの習近平体制。ネット対策では政府批判的な言論を封殺し、政府を支持するネット世論のムードを作ることが課題だ。
まず目を付けられたのがツイッター型のSNS、ウェイボー(微博)。基本的に不特定多数に向けて情報を発信するオープンなSNSなので情報が拡散しやすい。当局は「大V」と呼ばれるオピニオンリーダーを続々と逮捕、残った人々も身の安全を守るために発言を控えるようになった。運営企業も問題ありそうなつぶやきをごっそり削除した。
政府の検閲もあってウェイボーが勢いを失う中、勢力を拡大しているのがLINE型のSNSだ。最大手はテンセントのWechat(微信)。基本的には一対一のコミュニケーションツールだが、多数に向けて発信できる公衆アカウントや簡易SNS機能を通じて情報を拡散することができる。クローズドなSNSなので拡散力は低いが、その分目につきにくく規制が困難だ。
今回の規定では、公衆アカウントの情報発信を規制し、事業者に問題情報削除の専属スタッフ配置を義務づけている。クローズドなSNSの検閲が本格化することを示す規定だと言えるだろう。
■外資系への影響は?今回の規制は基本的に中国国内向け、とりわけ最大手のWechatに対するものと言えよう。
LINEやカカオトークなどの海外サービスは一切のアナウンスなしにシャットアウトされている。
ロイターによると、規制から1カ月が過ぎた今になって、中国政府は「テロ対策で遮断した」と韓国政府に説明したという。今さら外資系排除の施策など不必要ではという気もするのだが、今回の規定で中国市場進出のハードルが上がったことは間違いない。実名の確認手続き、検閲用の専門スタッフなどコストがかかる条件が山積みとなったからだ。
まあ中国市場におけるWechatの支配はすでに盤石で、今さら挑戦する外資系企業など出てこないかもしれないが。
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