• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

尖閣対立で勝ったのは日本?それとも中国?玉虫色の決着と今後の課題(高口)

2014年11月11日

2014年11月10日、北京市で安倍晋三首相と習近平国家主席の日中首脳会談が実現した。2011年12月以来、約3年ぶりの日中首脳会談の実現となった。

日中双方の世論で「よくやった」「国益を売り飛ばした」と賛否両論の声があがっているが、個人的にはまずまずのものだったのではないかと評価している。判定に突入したボクシングの試合のように双方が拳をあげ、「勝ったど~!」とアピールできる余地を残しつつ、今後の実務的交渉につなげる一歩を踏み出せたからだ。

というわけで、簡単に今回の首脳会談と今後の課題について考えてみたい。

Claimed by the land of the rising sun.
Claimed by the land of the rising sun. / Al Jazeera English


■日本が勝った?中国が勝った?

直前まで首脳会談実現は決まらなかったが、7日に突破口が開かれた。谷内正太郎国家安全保障局長と楊潔篪国務委員が会談して、4つの合意が発表された。

1 双方は,日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。

2 双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。

3 双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。

4 双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。

日中両国にとっていい塩梅の落としどころをさぐった内容だ。

中国側は「日本が尖閣諸島が係争地であると認めることが首脳会談の前提」だと主張してきたが、「中国側はなんか言っていることは知っていますが、日本の主張は変わりません」という日本にとっても受け入れられる地点に落ち着いた。溜池通信(PDF)によると、1985年の日本国会答弁で、安倍晋太郎外相(当時)が「中国が独自の主張をしていることは承知している」と答弁しており、今回の合意は国会答弁からはみだす内容ではない。

中国としても、中国の主張について日本が明文化した、紛争地と認めたのだと言い張って勝利宣言できる内容だ。面白いのは合意の発表については日本語版、中国語版に若干の差異が認められこと。日本語版では「異なる見解」とされている部分が中国語版では「不同主张」(異なる主張)とされるなど、より一層「中国が勝った感」が強調される内容となっている(参考記事:「日中の合意文書、中国語版に異なる表現 解釈に余地」(日経新聞、2014年11月8日)。

日中双方が勝利宣言できる落としどころを頑張って見つけたと評価できるのではないか。特に中国は日本に譲歩したと世論に解釈されることを激しく嫌っており、「首脳会談の実現を「日本の外交上の勝利」と宣伝しないよう、申し入れてきた」のだという(TBS)。


■良かったポイントと課題

個人的に良かったと思うポイントは「日中が仲良くなりすぎなかったこと」である。何も中国が嫌いだからそういうのではない。

2006年、第一次政権発足直後に安倍晋三首相は中国を電撃訪中。その後、空前の「日中蜜月ムード」が演出された。しかし目を血走らせながら「一衣帯水じゃー!日中は仲良しじゃー!」と叫ぶのは辛いのである。仲良すぎることにすると、逆にちょっとした衝突がムードに水を注すことになる。南シナ海問題しかり、環境問題しかり、人権問題しかり、日本は今後も中国にお小言を言うべき機会は多いだろうし、その意味ではむやみやたらな友好モードよりは現実的実直的な関係を積み上げていくほうが好ましいのではないか。

もっとも大きな課題が残されている。それは尖閣近海での不測の事態だ。中国公船による巡視が継続されるのか中止されるのかは今後の交渉次第だろう。公船ならばある程度のコントロールは効いているだろうが、それ以上にやっかいなのは漁民だ。中国の漁民が海保相手に暴れて死傷事件でも起きれば関係は一気に悪化する。漁民の対応について両国がガイドラインをいち早く作れるかどうかは重要なポイントだろう。

歴史問題については首相が靖国を参拝すればすべての合意はパーになるだろうが、秋の例大祭が中国側の許容するラインとなるのではないか。すなわち首相の奉納と閣僚参拝までがぎりぎり許せるラインになったと言えそうだ。

課題は残されているが、突破口が開いたことは事実。もろもろの実務的交渉がやりやすくなったことは間違いないので、あとは相手に嫌みを言いつつも、粛々と地道な外交、地道な商売を積み重ねていく関係が続くことを祈っている。

関連記事:
「尖閣は日本の領土」人民日報の大チョンボを紹介、大反響の中国ブログを全文訳してみた
【尖閣】「今回は本当に戦争になる」日本人があまり知らない中国人の危機感と日中マッチポンプ的メディア構造について
尖閣は日本領?それとも中国領?領有権を確かめる31の方法―中国の政治ジョークをご紹介
【尖閣問題】失言王ジャッキー・チェン、中国支持の発言が予定調和的誤爆に
【尖閣問題】失言王ジャッキー・チェン、中国支持の発言が予定調和的誤爆に


トップページへ

 コメント一覧 (6)

    • 1. ハナクソ1
    • 2014年11月18日 01:23
    • 島問題はとても難しいただ日本政府は元々日本の島だから何故そんな事言いだすのかといいたい所で、日本は中国と仲良くしたいのにもし最悪日本の島を取られたらとんでもない事になるだろう又現実的に日本の島だがもしも中国が奪い取ってしまったらもっと現実は厳しくなる、アメリカがアジアを警戒してアメリカと中国の睨み合いが始まってしまうだからこそ日本は手放す訳にもいかないのだ島を挟んで中国も知らない所でアメリカがしゃしゃり出様とする所を日本が穏便に日本が安定させている事を何時になったら中国は気付くのか!?
      中国は日本がアメリカにしがみ付いていると思い込んでいるが現実は戦後から日本はアメリカの監視下に置かれている様なもの何かに付けてアメリカは日本を上から抑えているのだ、もしも日本が軍隊を持つような事になれば戦争の危機では無く日本の技術力で軽量したり色んな技術で直ぐに世界で一番の軍事国家になってしまうだろうそうなるとアメリカの製造する鉄砲や軍事武器が売れなくなるから止めているのだ
    • 2. ハナクソ2
    • 2014年11月18日 01:38
    • 中国は何時から忘れてしまったのだろう日本は、戦後一貫して中国に戦争をお詫びし続けている友好国だと云う事を
      中国は原爆を落とされ焼け野原になった日本に戦後賠償を求めなかっただが日本政府は戦争を悔い中国の亡くなった人は戻せないが中国の国民に日本と同じレベルの生活環境を得て欲しいそれが戦後一貫して日本政府が夢見ている現実だ。中国の道を作り橋を作り飛行場を作る日本企業にお願いして技術協力もして来た。戦後中国からパンダが来た時日本人は戦争を悔いて本当に中国との友好に沸いていた。そして中国が日本の新幹線を購入した事も日本国内ではとてもうれしい気分だった。日本の新幹線が中国に走るなんてこれはまさしく日本と中国の友好の証だと日本国民は誰しも思った。何が中国の気持ちを変えてしまったのだろう?
      新幹線を購入したがこれは中国が中国の技術で作ったあ高速鉄道だ宣言・・・・・日本国民はとても悲しかった。
      そして中国で高速鉄道が走る事で日本人はそれでも喜んでいた。そしてあの事故が起こった時、日本国内では中国鉄道の批判では無く中国の高速鉄道が中国が作ったとしても日本は如何して協力してあげなかったのかそっちの方が問題視されていた。
      技術だけでも教えたり共同で作って居たら中国に事故なんて怒っていなかっただろうに
    • 3. ハナクソ3
    • 2014年11月18日 01:49
    • 日本は戦後から中国に対しては戦争をお詫びし続けて来た。日本は軍国主義で無くなっているから政府が経済界に頼み込んで中国の田舎町に日本企業の生産工場を作った。
      出稼ぎに行かなくてはならない中国国民の生活をより豊かにしてあげたいからだった。日本国内にも仕事が無い若者が居るのにそれでも中国国民のためにと生産工場を作った。日本的生活スタイルを教え込むために、生産工場で働いて毎月給料が貰える、その給料で家庭を養う
      給料が稼げたら中国の街に税金を納めるすると街も豊かになる、生活が豊かになれば子供を学校にも入れられるようになる中国がより発展していく日本政府は企業に、企業としてはあまり利益は生まれないが中国国民の生活環境のためにと頼み込んで居たのです。
      自分達で製品を作り中国国内で売るそれだけでお金の流れができるそうすれば中国政府も豊かになれるそう信じていたのに・・・。
    • 4. ハナクソ4
    • 2014年11月18日 01:59
    • 日本政府は企業に頼み企業も利益より中国国民の安定した生活環境を作りたかった。だが中国政府なのか中国の街なのか役人がその日本人の計画をただの金儲けと勘違いしたのだろうか!?
      日本人を減らして中国人の雇用を増やす。
      給料を倍にする・・・給料をさらに倍にする・・・さらに・・・。
      中国国民を働かせるのだから退職金を払え。
      もっと給料を増やせ・・・・・ストライキだ・・・ボイコットだ!?
      元々日本企業は日本政府に利益が薄くても雇用を与えて欲しいと頼んでいたが生産工場の払う給料ばかり増えて
      仕事をやらないストライキばかりが繰り返されて日本企業が利益がで無くなりその街から撤退しなくてはならなくなってしまった。
      それでも中国国民の生活を考えて無理をしていた企業も少なくなかった。
      そしてあの反日デモが勃発した。
    • 5. ハナクソ5
    • 2014年11月18日 02:12
    • 中国政府なのかその街の役人なのか解かりませんが日本政府の戦後からの約束をどうして忘れてしまったのですか!?
      中国の日本企業が壊され焼かれ暴れられた・・・・・でも日本国内には直ぐに情報が入り暴動を起こしたのは中国国民では無く仕事にあふれたウイグル地区という所の若者だとだから中国国民の雇用を無くしてはならないと日本政府は考えていた。
      それなのに中国政府の宣言に日本国民も耳を疑った・・・『総て日本が悪い ???』
      中国政府は何時から日本政府の戦後一貫して中国国民の生活を安定させたいと云う約束を忘れてしまったのですか!?
      其れからは幾ら日本政府が企業にお願いしても生産工場どころか営業所まで中国から撤退させるようになってしまった。
      もしかして日本政府がやってきた事を日本人が金儲けしに中国に来たと思い込んでしまったのですか!?

      日本政府はアメリカよりも中国に友好的に接して来ていたのに、日本の生産工場が中国に出来て中国の総てが景気良く動いていたのに日本企業を中国政府が追い込んで総て撤退してまた昔の何もない中国に戻ってそれで何が得られるのですか!?
    • 6. ハナクソ6
    • 2014年11月18日 02:21
    • 当然戦争をした日本が憎いそれはそうなんでしょう
      僕は個人です。僕はこの日本の話を聞いて嬉しかった。
      中国は日本を許して友好的に接してくれる
      そう信じていただから中国人の友人ができて嬉しかったし同じ会社で働いて何時も楽しんで居る

      日本にとって韓国は正直どうでもいい国、アメリカに頼まれて3カ国同盟をさせられているだけで、
      何時か日本の同盟国は中国になってくれるのだと信じていた。
      戦後友好的にしてくれた中国がこのまま友人になってくれると信じていたのにとても悲しい。

コメント欄を開く

ページのトップへ