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2014年11月12日
「習近平って実は開明派だったりして。政権を奪取したら中国を民主のパラダイスへと導いてくれちゃったりして。」
2012年の習近平体制発足前、こうした根拠レスな期待も少なくありませんでした。パパが改革派だったし、文革で辛い目にあっていたし……といった薄い根拠が加えられているケースもありました。なんか「中国は変わるっ!」的な面白いネタを書かないとあかんという強迫観念にとらわれているチャイナウォッチャーは救いようがありませんが、強大な中国共産党が揺らぐ気配もないなかで開明派君主の登場に期待するしかない人々のことを考えるとあまりバカにはできません。習近平の前にも胡錦濤や温家宝にそうした期待が寄せられては踏みにじられていったわけですが、期待するしかなかったわけで。
習近平体制成立後、強力な言論統制や人権活動家への弾圧を経て期待はしゅるしゅるとしぼんでいくわけですが、最後の砦となったのが2014年10月20日から23日にかけて開催された四中全会(第十八期中国共産党中央委員会第4回全体会議)です。なにせテーマは「法治」です。なにか良いことをしてくれるなら最大のチャンスっぽいじゃないですか……。
という期待も激しく踏みにじられました。法治ではなく「社会主義法治」、国は党の指導に従うものといった内容が明文化され、むしろ後退しているんじゃないのとがっかりした人もいたでしょう。
ただそのがっかり感というのは勝手な期待を押し付けていたからにほかなりません。習近平体制のロジックは発足以来きわめて一貫していることが明らかになったのが四中全会でありました。そのロジックを簡単にまとめると以下のようになるのではないでしょうか。
・官僚の汚職は厳しく取り締まり、清く美しい共産党精神を復興させる。といったところ。「法治」もこれらの方針の一環、取り締まりの手段の一つという位置づけであります。なんだかいいことをやっているように思われますが、加えて「党中央の無敵の権限(=人治)は保持しますよ」というただし書きがついてきます。
・党紀律委員会を独立させ実効性ある監視を行う。
・地方官僚の権限は規制し経済介入を制限、チキンレース的地方の成長競争を取り締まる。
・上海自由貿易試験区に象徴的なように、地方政府の恣意的な権限を縮小させる。
・シャドーバンキングなどを活用した地方の債務も取り締まる。
「究極的には党が決定権を持つという「人治」を維持するために法治の仕組みを調えるという皮肉な状況だ。」