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日中首脳会談に賛否両論の意見、評価のポイントとはなにか(高口)

2014年11月13日

10日の日中首脳会談はやって良かったのか悪かったのか、報道を見ると2つに割れているようです。なぜ論者によって評価が違うのか、どこがポイントなのかを考えてみます。

Claimed by the land of the rising sun.
Claimed by the land of the rising sun. / Al Jazeera English



■日中首脳会談、「良かったよ派」VS「悪かったよ派」

日中首脳会談については山ほど論考が出ているわけですが、ここでは「良かったよ」派の代表として私めを、「悪かったよ派」の代表として福島香織さんを取り上げさせていただきます。

まず私の考えですが、記事「尖閣対立で勝ったのは日本?それとも中国?玉虫色の決着と今後の課題」にまとめています。要点は「日本と中国、どちらも国内向けにメンツが立つ落としどころを見つけた。一気に関係改善にはならないが、とりあえず今後はさまざまな実務交渉をしやすくなったんだから、ぽつぽつとやるべきことをやればいいんじゃないの」であります。

一方、福島香織さんのご意見。記事「検証・四つの原則に関する合意文書」(日経ビジネスオンライン)を参照しました。乱暴にまとめると、「玉虫色の合意って言っているけど、中国は今後“日本が譲歩した”と言い立ててポイントを稼ぐのは明白。自分の懐が痛まないようにと小細工をしたあげくに中国に好き放題やられるぐらいなら、がっつり譲歩して後でその分徳をするといった大胆な判断があっても良かったのではないか」であります。


■「異なる見解」をどう評価するか?

高口と福島さん、両者の評価の違いは詰まるところ7日に発表された4つの合意の2番、「双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識」という文言に集約されています。

微妙な言葉ながら言質は与えていないというのが日本の立場ですが、中国は宣伝戦でこれを言質だと言い立てるだろうというのが福島さんの指摘。

実際、日本の岸田文雄外相が尖閣に領土問題はないと発言したら、中国大使館が速攻抗議した(読売新聞)ことで、「それみろ、中国は合意を逆手にがんがんくるぞ」と感じた人もいるようです。もっともこれは鏡の裏表であり、中国国内では岸田外相の発言に「それみろ、日本はあいまいな合意を作って速攻反故にしやがった」と騒ぐ人もいたわけで。お互いが自由に解釈できる合意を作ったわけなので、お互いの解釈を批判するところまでが様式美と見るべきでしょう。

「異なる見解」が言質にとられるのではないかという福島さんの主張はよく分かるのですが、高口の考えは「どうせ守り切れない防衛線なんだから仕方がない」というもの。たとえ今回の合意がなかったにしても、事ここに及んだ以上、尖閣諸島が争点化するのは避けられないですし中国はごりごり来るわけですよ。守り切れない防衛線に固執するよりは、将来のリスクがあったとしてもそれと引き替えに交渉のテーブルに座る方が有利なんじゃないか、と。

最終的な決着はまだまだ先の話となるわけですが、その結果を決めるのは今回の合意ではありません。今後日本がどういう力を保っていけるか、国際社会でどういうポジションを持てるのか、どのような日中関係を築いていけるかにかかっているわけです。とりあえずお茶を濁しておいて、実務をクリアしながら前進していく。そのためのスタート地点としてはまずまずなんじゃないかな、というのが私の考えです。


■別の視点からの「悪かったよ派」

……と書いていたら、高口的考えの甘さをご指摘する意見を目にしました。研究者・前田宏子さんのつぶやきです(Togetter)。

「日中合意についてそれなりに評価する声が多いようだが、私は日本は妥協の仕方を間違えたと思っている。海上連絡メカニズムなどの危機管理に関する話し合い他、日中間の対話が再開されるのは歓迎するが。譲歩したとか、どっちの譲歩が大きいとか、そういうド素人的な批判をしているのではない。」

「日中間の公式対話や文書に「尖閣」を書くこと自体が譲歩である。その代わり、中国は挑発的行動を控えるような何らかの条件を飲む、というのが本来あるべき形だった。もちろん、中国が「もう船や飛行機を送りません」と約束するわけはないが、「両国は東シナ海の平和に責任を持ち、挑発的行動を起こさないことで一致した」くらい書き込んで欲しかった。そうすれば、中国が船や飛行機を送り続けた時、日本は少なくとも中国や国際社会に対し「合意に違反している」と中国を批判することができた。」

尖閣での衝突回避に実効性のある条項を入れておくべきだったというご指摘。納得です。私としてはこのあたりは首脳会談後にやる実務的なお話なのかと思っていましたが、対立関係の解消という意味ではキモになるポイントなので、ここを書けないのでは意味がないというわけですね。


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