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2014年11月16日
■中越漁民戦争
中国漁民が国の意志を受けてばりばり働いた事例はあります。
それが2014年5月から7月まで続いた南シナ海の中越対立。巡視船を最前線に立たせるとなにかの弾みで武力衝突に発展しかねないと危惧。漁船を最前線に立たせました。ちなみにベトナム側も阿吽の呼吸で漁船を動員。漁船VS漁船の中越対立となりました。ちなみに大型で鉄製の中国漁船に対し、小型で木造のベトナム漁船は劣勢。ベトナム首相が鉄製漁船建造補助金を発表するなど、漁船バトルは白熱しました。
また2010年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事故でも、中国人船長は軍人では、いや退役軍人ではと噂されましたが、確認は取れていないはずです。
■ワタリガニを目指して1000隻が韓国近海に
ベトナムの事例がある以上、小笠原・伊豆諸島の中国漁船団も中国政府の指令による者に違いないっ!と思いたくなりますが、個人的には疑問です。というのも儲かるなら中国政府のコントロールを離れて200隻ぐらいやってきても不思議じゃないからであります。
中国漁船の大挙襲来ではなんといっても韓国と中国の間の海、黄海が有名です。ワタリガニ漁の最盛期には1000隻を中国漁船が襲来。圧倒的に船不足の韓国海洋警察を尻目に傍若無人な漁を続けます。刊行側も放水銃やら催涙弾やらを動員しているのですが、中国漁船は棒や手斧で抵抗。防刃ジャケットの間から刃が入り、海洋警察官が殉職する事件もありました。
黄海での中国漁船団の襲来、中国政府の差し金とは思えません。むしろ中韓関係を強化したい時期にも大暴れし、中韓関係の大きな障害となっているのです。中国政府がコントロールしきれない側面が強いでしょう。
今回、あまりにも大量の船が小笠原・伊豆諸島周辺に来たのでニュースとなりましたが、これまでも中国漁船は九州近海、沖縄付近で赤サンゴの違法密漁を続けていましたし、ちょくちょく拿捕されています。中国国内でも赤サンゴ密漁の漁船が摘発された事例もあります。漁船団の多くは「三無漁船」と呼ばれる未登記の船。当局は発見し次第、解体処分することにしていますが、それでもおいしい稼ぎとなるので止められないというのが現状でしょう。
■中国漁民、その厄介なるもの
2010年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事故以来、中国の漁民というのは大変「やっかい」な存在となっています。それも中国にとって、です。
中国政府が補助金を払って動員する事例もある一方で、政府のコントロールを外れて違法操業やら暴力行為を働き外交関係に要らぬ緊張を与えることもあります。また中国近海の魚が汚染と過剰な漁で壊滅状態になった中、中国当局は休漁期間を定めてその間の補償金を支払ったり、あるいは燃料補助金を支払ったりと漁民の生計維持にも苦慮しています。できることならば少数精鋭を残して廃業していただきたいというのが中国政府の本音でしょう。
また中国ネット世論は往々にして漁民に同情的です。「貧しいから」「環境破壊で生活の糧を奪われたから」と同情すべき理由はよくわかるのですが、日本や韓国など他国が中国漁船を拿捕すると「かわいそうな漁民を虐めるとは何事か」「中国政府はやるべき仕事をしていない」とのトホホな対応に。小笠原・伊豆諸島周辺の中国漁船団が話題になった後、中国外交部は暴力的な取り締まりを避けるようコメントしましたが、その背景には中国ネット世論への配慮があるのです。
政府のコントロールが効かない上に、なにかしでかすと中国政府が後押しせざるを得ない中国漁民。中国政府にとってもやっかいですし、日本を含む周辺諸国にとっても厄介であります。違法操業などの中国漁民の違法行為をどのようにして外交問題にならないよう処理するか、日中がいち早く共通認識を作ることが不可欠でしょう。
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だって泥棒したサンゴ礁の金ですから