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2015年01月04日
湖南衛星テレビでは12月21日から時代劇「武媚娘伝奇」の放送を開始しました。中国唯一の女帝・武則天(則天武后とも。現在は武則天と呼ぶのが一般的)を題材にしたドラマで、主演はアイアンマンやXメンなどハリウッド進出も目覚ましい中国のトップ女優ファン・ビンビン。
ところが放送開始からわずか1週間で「技術的な原因」により放送が一時中止となりました(ちなみに中国では週一放送の日本とは異なり、毎日同じドラマが放送されます)。
・湖南衛星テレビが時代劇の枠を使い切っていたのか?(毎年のように謎の規制があるのですが、その結果、「タイムトラベル物やスパイ物は禁止。時代劇は年何時間まで……」といった不思議な決まりができています)。
・CCTVの新ドラマの視聴率をあげるために放送を中止させたのでは?
・露出度が高すぎたのでは?
などとささやかれていました。
唐代の服装は「中国歴代王朝露出度ナンバーワン」の誉れが高いのですが、確かにやり過ぎ感は否めないかも……。またトレイラーを見ると確かに盛り込みすぎは否めません。ラブシーンだけではなく、後宮での女の陰謀バトル、イタリアの仮面舞踏会チックな仮面、日本マンガの花魁チックな衣装、カンフー、拷問と盛り上げる要素満点なのであります。
で、この「武媚娘伝奇」ですが、数日のお休みを経て1月1日から放送が再開されました。「技術的な原因」とはなんだったのか、その答えも明らかになっています。答えは(3)の露出度、でありました。
なぜわかったのかというと、1月1日以降の「武媚娘伝奇」からはファン・ビンビンの胸が消えたから。ともかく顔のアップを映し、首から下は映さないという荒技で、テレビ局側は突貫の修正を成し遂げたそうです。
*ファン・ビンビンの「乳溝」(胸の谷間)が見られなくなったことに怒った中国ネットユーザー。今後は毛沢東の半裸写真も顔面アップにするべしと主張。
中国のドラマは放送前に検閲が入るのでこういう事態は珍しいのです。あるいは本放送を見た偉い人が「あれ、ちょっと見えすぎじゃないの」と言ったですべてがひっくり返ったという可能性も。タランティーノの映画「ジャンゴ 繋がれざる者」も第1回上映が始まった後に公開一時中止が決まるというドタバタぶりだったのですがやはり偉い人の一言が原因だったようで、ありえない話ではありません。
新年早々まれにみるドタバタ劇を見せてくれた中国検閲業界。2015年もホットな話題を振りまいてくれそうです。
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