中国でプレイステーションの販売が始まった。しかし前途は暗い。「ゲーム内でも一人っ子政策遵守」といった奇々怪々な中国のコンテンツ規制をどうくぐり抜けるのか、スマホ全盛時代にゲーム専用機の居場所はあるのか、行く手には景気の悪い話ばかりが待ち構えている。
PSP Player / Suvcon
■中国の奇々怪々なコンテンツ規制
2015年3月20日、中国でソニーの据え置き型ゲーム機「プレイステーション4」(プレステ4)、携帯ゲーム機「PS VITA」が発売された。なぜこれまで売っていなかったかというと禁止されていたため、だ。2000年から15年間にわたり中国では外資企業によるゲーム機販売が禁止されていたが、上海自由貿易試験区の拠点を置く企業に限り、製造・販売が解禁された。
もっとも前途は多難だ。 プレステ4の販売開始はもともと1月11日を予定していたが、「諸般の事情」により2カ月延期された。諸般の事情の中身については明かされていないが、中国おなじみの検閲制度の壁にはばまれて中国語版ソフトが間に合わなかった可能性が指摘されている。
「ゲームの検閲ってなに?暴力表現の規制が激しく厳しいのかな?」と思うのは普通の発想。中国ではコンテンツ産業に対して不可思議な規制がかけられることが少なくない。例えば日本の漫画「デスノート」や映画「ハリーポッター」が「迷信邪教を助長する」として取り締まられたこともあったし、ファンタジー系ネット小説で「超能力、霊力、転生、仙人は禁止」との通達が出たと話題になったこともあった。
最近、話題になったのはあるSNSのつぶやき(チャイナ・デジタル・タイムズ)。
「管理部局がこんな要求をしてきた。ゲーム内の子作りシステムは一人っ子政策に合致するようにしろ、だってよ。ゲーム内で子どもを2人作ったら罰金を払わないとダメなのかね。」
「うちの会社が“夢想帝王”っていうゲームを作ったんだ。皇帝になって名将や美女を集めるって内容。でも検閲で、中国は一夫一妻制だからめかけは許せない、妃もダメって言ってきた。古代の皇帝なんだから妃はいるでしょって抵抗したんだけどダメでした。結局、妃じゃなくて宮女って扱いになったんだけど……」
この手の通達は非公開な上に担当者次第という部分も大きく、真偽を確かめるのは難しいのだが、あって不思議ではないエピソードだ。この手のわけわからない検閲をくぐり抜けて、大ヒットゲームを生み出せるか、期待したい。
■PSP in 中国、栄光の歴史もっとも今さらゲーム専用機は厳しいのではないか。一般層向けにはスマホ、タブレットのゲームが浸透し、ゲーム好きはPCゲームにはまっているという状況で、ゲーム専用機を買う層がそうそういるようには思えない。
解禁がもう少し前だったら状況は違っていたかもしれない。スマートフォンが普及する前、中国では輸入されたプレイステーション・ポータブル(PSP)が人気アイテムとなっていたからだ。しかもタダのゲーム機ではない。改造することによって、海賊版ゲームが遊べるだけではなく、ファミコンソフトが遊べるエミュレータが動いたり、電子書籍が読めたり、海賊版動画を再生できたり、ブラウジングもできたり……とスマホができることはだいだいできてしまうスーパーマシンとなっていた。山谷剛史氏によると、中国で売れた輸入PSPは1000万台を突破したとの説もあるという(
ascii.jp)。
しかしこのPSPブームは次第に下火になっていく。ソニーがプログラムの改造をできないよう対策を講じているうちに、PSPと同じぐらいオシャレで、もっと海賊版に寛容な(?)スマートフォンが登場したのだった。
海賊版が悪なのは当然なのだが、中国におけるかつてのPSPの輝きを知っている身からすると、もっとうまくやる方法はなかったのかなと残念に思うのだった。
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