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グローバル人材のお手本は日本にいた、『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』を読む(高口)

2015年03月25日

趙海成著、小林さゆり訳『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』CCCメディアハウス、2015年。

フリーランスライター、翻訳者の小林さゆりさんからご恵投いただきました。

本書は2013年出版の『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』の姉妹編……とのこと。こちらは2012年9月の反日デモを経験した在中日本人のインタビューを集めた本で、通して読むと中国人にもいろんな人がいて助けてくれる人もたくさんいた、世間がイメージしているようなむき出しの憎悪にさらされるだけではないんだよというのがわかる仕組みになっています。いわゆる嫌韓反中本ブームが広がる中での逆張り企画は見事に的中、5刷を重ねるヒットとなっています。

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今回出版された『在日中国人』ちょっと色が変わっていて、中国人の実業家、ジャーナリスト、研究者、医師など著名人を中心としたインタビュー集となっています。もともと中国語サイト、雑誌で連載していたインタビュー記事をまとめたもので、姉妹本的なタイトルは後付けのもの。いろんな在日中国人が日中関係の悪化をどう体験したのかという期待で読むとちょっと肩すかしに感じるかもしれません。

それはそれとして、在日中国人の成功者の立身出世成り上がり物語として読むと、これがなかなかの面白さであります。例えば4つも保育園を経営している応暁雍さん。日本人の夫と結婚し子どもを産み、公立保育園に入れるも、あまりの融通のきかなさにびっくり。また助けがない子育て環境に心を病んでしまいますが、そうした不便な点を改善した保育園を運営したら大人気に。今では園児の3分の2が日本人とのこと。

応さんの話が典型的ですが、外国人の目から見ることで日本の“不足”が見える、日本社会をより便利にするビジネスができるという面もありそうです。「世界に羽ばたけグローバル人材!」と煽られている昨今、在日外国人というグローバル人材こそが何よりのお手本なんじゃないかなと感じさせられました。

もう一点、興味深い点があります。それは登場する人物の多くが中国共産党寄りな人々であること。インタビューの中でもさらりと「プラスエネルギー(正能量)」なんていう習近平体制のキーワードを使う人もいます。「中国共産党寄り」と「日本好き」は両立できてしまう話なのです。考えてみれば当たり前のことですが、ちょっとどきっとさせられます。そのあたりの違和感、ざらつきを感じさせるような小林さゆりさんの巧みな翻訳が光りました。



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