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中国ウォッチャー界の「ゆく年くる年」=ブックレビュー・津上俊哉『巨龍の苦闘』(高口)

2015年06月01日

津上俊哉『巨龍の苦闘 中国、GDP世界一位の幻想 』(角川新書、2015年)をご恵投いただきました。

今や日本一のAIIB男としてニュース番組でもひっぱりだことなっている津上さんの新刊です。2013年の『中国台頭の終焉』をヒットさせた津後、2014年の『中国停滞の核心 』、そして今作と年一ペースで新刊を上梓されています。


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個人的に津上本は「中国ウォッチャーのゆく年くる年」と呼んでいます。年1冊新書を読むと過去1年間の政治、外交、経済のビッグトピックを振り返れるという、大変便利&実用的な本として勉強させていただいております。本作もAIIB、シャドーバンキングの流れを汲む地方政府債務問題、三中全会改革の進展といったトピックからこの1年を振り返っています。

律儀に刊行ペースを守られているあたりでも誠実な人柄がうかがえますが、内容もその人柄どおり。帯に「中国分析に極論はいらない!」というキャッチコピーがおどっていますが、津上さんのキャラクターをよく押さえた言葉じゃないか、と。

というわけで本書は激しくオススメ!
長期スパンの問題については『中国台頭の終焉』が一番密度が濃いので、津上本未体験者はまずこちらから。その後は最新の「ゆく年くる年」を読むというのがいいかもしれません。


*余談
「ノーアウト満塁でマウンドに立ったリリーフエース」ーー中国国家主席習近平を野球に喩えると、そうなると思います。

本書の印象的な書き出しです。異論はないのですが、そもそも中国は毎イニングランナーをためつつもぎりぎりで切り抜ける武田久的投球を続けてきたのではないでしょうか。ランナーをためた上で、「こんなにランナーがたまったんやから、こら改革せんとやばいで」と説得材料にして大胆な改革を進めていくという寸法。果たして今回も江夏の21球的神ピッチングを見せることはできるのでしょうか。

ちなみに我らが日本を野球になぞらえると、「ピンチに追い込まれつつも投球間隔が長すぎてなかなか試合が進まない」森福的ピッチング……って感じでしょうか。

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