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ニートが村を豊かにした……中国版「三年寝太郎」物語とインターネットショップ村(高口)

2016年01月06日

中国の「淘宝村」(インターネットショップ村)をご存知ですか?

淘宝とは中国EC最大手アリババが運営するネットショッピングモール・サイト。その淘宝がネットショッピング・ビジネスが超盛んだと認定した村のことを「淘宝村」と言います。ネット百科辞典「百度百科」によると、「全世帯数の10%以上のネットショップがあること」「取引額が年1000万元(約1億8000万円)以上」という条件があるのだとか。2013年に20の村が初めて淘宝村に認定されました。2014年には淘宝村の数は200を超すまでに増えています。

先日、NHKの番組「Asia Insiht」で最古の淘宝村の一つ、江蘇省徐州市睢寧県東風村が紹介されていました。人口5000人の村に、家具を製造、販売するネットショップが2000以上もひしめきあっています。

20160106_中国_インターネットショップ村
*画像は孫寒さんのネットショップ。

なぜこの村が家具製造の一大拠点になったのか、という物語が大変面白いのです。孫寒さんという一人の村民が大学に進学するもやる気なく中退。警備員やらなにやらのバイトに励むも食えなくなって村に帰ります。当然の如く親からは「働け」と叱られるわけですが、孫さんはめげずに「ネットビジネスするから金を貸せ」とせびり、パソコンを一台買います。その後はネットショップで転売ビジネスにいそしむわけですが、転機となったのが2007年、上海でイケアを見たこと。「これは売れる!」と直感した孫さんはイケアっぽい家具を大工さんに作ってもらってネットショップで販売。これが大当たりすると、村人たちがみなみな真似しだして、10年もたたないうちに家具インターネットショップ村の完成……という次第。

ダメニートが村に富をもたらした。21世紀中国版「三年寝太郎」みたいな感じでしょうか。

東風村の物語で何が一番面白いかというと、東風村にはもともと家具製造にとって有利な条件が何一つなかったという点です。近隣に木材が豊富とか職人さんが多いとかなんにもなくて、ニートな若者の思いつきと他の村人たちの模倣が一大産業を生んだという……。産業集積なんてそんなものと言われればそれまでかもしれませんが、なかなか驚きです。

ここまでで終われば「厚かましいニートが村を豊かに」といういい話で終わるのですが、そうは問屋がおろしません。アジアITライターの山谷剛史さんが2013年に東風村を訪れ、記事を書いています。

中国全土の農村部で淘宝村になろうとする村が似たような商売に手を出し始めた。誰もが経営者を夢見て、多くの村人が家族という小さな企業体でそれぞれ同じような店を興したわけだ。その結果、向かった先はケータイの販売で起こったような先の見えない価格競争が起こり、農民同士の経済戦争が勃発した。

参入のハードルが低いだけに、似たような淘宝村が大量出現して、地獄の価格競争に巻き込まれるという……。しかも中国政府は農村振興策としてインターネットビジネスを大々的に推進しているので、参入者の数はさらにアップ。

競争に勝ち抜くためにはなにかの突破が必要なんでしょうが、果たしてそれをなしうる村は出てくるのか。そして失敗した村はどうなっていくのか。5年後、10年後の淘宝村物語が気になります。

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