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2016年01月06日
*画像は孫寒さんのネットショップ。
なぜこの村が家具製造の一大拠点になったのか、という物語が大変面白いのです。孫寒さんという一人の村民が大学に進学するもやる気なく中退。警備員やらなにやらのバイトに励むも食えなくなって村に帰ります。当然の如く親からは「働け」と叱られるわけですが、孫さんはめげずに「ネットビジネスするから金を貸せ」とせびり、パソコンを一台買います。その後はネットショップで転売ビジネスにいそしむわけですが、転機となったのが2007年、上海でイケアを見たこと。「これは売れる!」と直感した孫さんはイケアっぽい家具を大工さんに作ってもらってネットショップで販売。これが大当たりすると、村人たちがみなみな真似しだして、10年もたたないうちに家具インターネットショップ村の完成……という次第。
ダメニートが村に富をもたらした。21世紀中国版「三年寝太郎」みたいな感じでしょうか。
東風村の物語で何が一番面白いかというと、東風村にはもともと家具製造にとって有利な条件が何一つなかったという点です。近隣に木材が豊富とか職人さんが多いとかなんにもなくて、ニートな若者の思いつきと他の村人たちの模倣が一大産業を生んだという……。産業集積なんてそんなものと言われればそれまでかもしれませんが、なかなか驚きです。
ここまでで終われば「厚かましいニートが村を豊かに」といういい話で終わるのですが、そうは問屋がおろしません。アジアITライターの山谷剛史さんが2013年に東風村を訪れ、記事を書いています。
中国全土の農村部で淘宝村になろうとする村が似たような商売に手を出し始めた。誰もが経営者を夢見て、多くの村人が家族という小さな企業体でそれぞれ同じような店を興したわけだ。その結果、向かった先はケータイの販売で起こったような先の見えない価格競争が起こり、農民同士の経済戦争が勃発した。