中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2017年05月06日
「インターネットニュース情報サービス管理規定」は2005年に第1版が発行した。ここでは「インターネットニュース情報サービス単位」として、「新しいことを書いていいとこ(メディアが設立したところ)」「転載のみOK(メディア以外が設立したところ)」「転載のみOK(メディアが設立したところ)の3種に分類されている。いわゆるニュースサイトを念頭に置いた規定だったわけだ。
このほど公布された第2版では、「ウェブサイト、アプリ、ネット掲示板、ブログ、微博、公共アカウント、インスタントメッセンジャー、ストリーミングなどの形式で、社会公衆にインターネットニュース情報サービスを提供するものは、すべてインターネットニュース情報サービス許可を取得しなければならない」と規定されている。許可を取得していない場合にはインターネットニュース情報サービスの提供が禁じられる。また転載ではなく、取材・編集を行う場合には別の許可も必要となる。
この12年間の間にネットメディアはさまざまな形に進化、分化していった。なかでも近年、勢力を伸ばしているのは自媒体だ。もともとは個々人が情報発信するメディア、「We Media」の中国語訳だったが、現在では微博や微信、あるいは動画配信サイトなど他社のプラットフォームを通じて発信するコンテンツ企業、メディア企業を意味するようになった。
日本でいうならば、独自サイトを持たずにフェースブックだけで発信するウェブメディアのようなもんである。そんなんで金になるの?と思われるかもしれないが、スマホ決済を使って有料記事を売ったり、ステマパブ記事を掲載したり、熱心なファンと編集者が一緒に行く旅行に行ったりというマネタイズプランがある。とはいえこんなんで黒字になっているところは少ないだろう。中国はニュービジネスに対する投資が半端ないので、読者の数さえ集められればベンチャー投資が入るのでそれで食ってるというのがほとんどではないか。
閑話休題。ともあれウェブメディアの多様化、拡散を背景に「ウェブサイト、アプリ、ネット掲示板、ブログ、微博、公共アカウント、インスタントメッセンジャー、ストリーミングなどの形式で、社会公衆にインターネットニュース情報サービスを提供するもの」という、全力で範囲を広げた規定を作ったというわけだ。
ただしこの書き方ではユーチューバーやら一般のSNSユーザーも対象に含まれてしまいそうだ。実際、ニュース企業と個人の趣味が不鮮明なケースもあるだろう。昨年、メイカーフェア深圳を取材したが、出展ブースの中には電子工作情報をWechatで流しますという自媒体もあったが、見た限りでは趣味の範囲にとどまっているものであった。彼らが許可証を採ることはほぼ不可能だし、人民日報の転載で電子工作情報を伝えることも厳しそうだ。一般のネットユーザーにも、「町で見かけた事件をネットに書き込んだら捕まっちゃうのかしらん?!」との困惑も広がっている。
新しい規定は6月1日から施行なのでその後の運用がどうなるか見ておく必要があるが、零細自媒体は戦々恐々としているのではないか。ともあれ、中国におけるウェブメディアの拡散、百花繚乱ぶりを伝える新規定と言えそうだ。
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