中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2025年01月17日
梶谷懐・高口康太『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書)、本日発売です。
目下の中国経済はたんなる景気後退ではなく、約30年にわたり続いてきた成長モデルの地殻変動に直面しています。
とかいうと煽りすぎぃと怒られそうですが、経済統計を見ると過去数十年観測されていなかった異常アラートが鳴りまくっています。
・2年連続でGDPデフレーターがマイナスに。1960年代以来の長期的デフレ局面に突入
・2021年後半から始まった不動産市場の下落は3年を過ぎた現在もなお止まらず。過去の下落はいずれも1年で底打ち。
・小売外食売上高は統計史上ワースト3位に。ワースト2位は2022年、1位は2000年。
・北京、上海の小売外食売上高はマイナス成長に
・就職難からギグワーカーが増加。フードデリバリーは1000万人超。配車アプリドライバーは前年比100万人増の約750万人。
・正規の職が見つかるまで一時的にギグワーカーになるつもりが長期化する人多数。中国版「氷河期世代」の誕生か
これらの異常事態は中国経済の成長メカニズムが転換したことのあらわれです。いやいやいや、中国経済も悪い話ばかりじゃない。そうした反論もあるでしょう。
・EVや太陽光パネルなどグリーンテックで中国が圧倒的実力
・自動車輸出で日本を抜き世界一に
・半導体製造でもキャッチアップが続く
・一帯一路でグローバルサウスでの存在感高める
ポジティブなトピックもあるわけですが、実はこうしたトピックもまた同じ中国経済の転換に起因しています。
一例として下記の図をご覧下さい。
金融機関の不動産向け融資が減少するのと同じタイミングで、グリーン融資が大きく伸びています。不動産市場下落で行き場を失ったマネーがグリーン投資に流れ込んだ……という側面があるわけです。
「中国経済に関する書籍はしばしば、楽観論もしくは悲観論、どちらかに大きく偏りがちである。そうした中で本書の特徴は、不動産市場の低迷による需要の落ち込みと、EVをはじめとする新興産業の快進撃と生産過剰という二つの異なる問題を、中国経済が抱えている課題のいわばコインの裏と表としてとらえる点にある。なぜなら、これら二つの問題はいずれも「供給能力が過剰で、消費需要が不足しがちである」という中国経済の宿痾とも言うべき性質に起因しており、それが異なる形で顕在化したものにほかならないからだ。「光」と「影」は同じ問題から発しているのだ。」「ピークアウトする中国」はじめにより
今、中国に何が起きているのか。
この変化は世界にどのような影響をもたらすのか。
中国政府は打開策を持っているのか?
そして、中国は今後どうなっていくのか。
すべてこの本に詰め込みました。中国の歴史的な転換、その全体像がわかる一冊になっています。ぜひお手に撮っていただけたら。
梶谷懐・高口康太『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』