皆さん、こんにちは。高口康太です。今日のテーマは「中国の5%成長、立派な数字の裏側にある問題とは?」というテーマについてお話ししたいと思います。
今回のトークは以下の記事を紹介したものです。詳しくは記事をご覧下さい。
2024年の中国経済成長率、5.0%という立派な数字。全国人民代表大会(全人代)で経済成長目標が発表され、2024年は5%前後とされました。目標通りに行くとしても、5%前後の下の方になると予想されています。実際、2023年の成長率は、年後半に行くにつれて下がっていました。
しかし、9月の終わりから大々的な対策を実施。不十分だという批判もありますが、第4四半期で成長率はアップし、5.4%に。エコノミストの予想を超えました。結果として、2023年は5%で着地。難癖つける人もいるでしょうが、素直にすごいと言ってもいいのではないでしょうか。
ただ、この5%の中身は去年とは違います。最終消費、固定資産形成、純輸出の支出面から分析してみましょう。2024年の5.0%成長を分解してみると、最終消費が2.2ポイント、固定資産形成が1.3ポイント、輸出が1.5ポイントとなっています。

一方、2023年は最終消費が4.6ポイント、固定資産形成が1.4ポイント、純輸出が-0.6ポイントで、輸出で足を引っ張られて消費が中心になっていました。つまり、今年は消費がガクッと下がって、去年はマイナスだった輸出が伸びたということです。
ここまでの輸出依存は、少なくとも2004年以降では最大です。貿易黒字はほぼ1兆ドルに達するという高い水準になっています。
「いやいやいや、輸出だろうが消費だろうが投資だろうが、ともかく成長を確保できているんだから羨ましいよ」という見方もあると思います。しかし、世界第二の経済体になった中国が、輸出依存で経済低迷から脱却しようとすると、他国からすると「勘弁してくれ」という話になります。
ここで思い出されるのが、「チャイナショック」です。19世紀末から2000年代前半にかけて、世界貿易に参入した中国製品の輸出ラッシュが起こり、世界各国の経済構造を大きく変えました。MITのデヴィッド・オーター教授の研究によると、チャイナショックによる中国の輸出によって、アメリカのラストベルト(さびれた工業地帯)の労働者が失望し、後のトランプ政権誕生の伏線になったとされています。
今回は、チャイナショック2.0と言えるかもしれません。前回とは違い、高付加価値商品も輸出されるようになり、すべてが中国製品になる可能性があります。そして、このタイミングで第二次トランプ政権が誕生するかもしれないのです。そうなれば、2025年は貿易摩擦が焦点となるでしょう。
第一次トランプ政権では、欧州や日本は対中経済見直しに消極的でしたが、今回は主体的に見直す動機があります。
また、WedgeONLINEには「トランプ大統領就任初日で早くも大騒動、振り回される中国」という記事もあります。一般中国人や政府、企業の反応を描いたものです。トランプ発言で人民元レートが動いたり、騒動が連発していました。
GROK2で生成したイラスト「電子ザーサイ」
「電子ザーサイ」という言葉があります。食事中についつい見ちゃうスマホコンテンツのことです。これからの時代、トランプのニュースが「ご飯のお供」となって、目を離せない存在になっていくでしょう。
1月17日新発売の新刊『
ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』をよろしくお願いいたします。
不動産バブルが崩壊し、今世紀最大の分岐点を迎えた中国経済。
このまま衰退へと向かうのか、それとも、持ち前の粘り強さを発揮するのか?
『幸福な監視国家・中国』で知られる気鋭の経済学者とジャーナリストが、ディープすぎる現地ルポと経済学の視点を通し、世界を翻弄する大国の「宿痾」を解き明かす。
